女性を笑顔にする、マーケティングのヒント。

今や消費の8割以上の決定権を握ると言われる「女性消費者」から選ばれ、愛され続けるためのマーケティングのヒントをお届けします。

急成長するハンドメイドC2C市場、20万人のハンドメイド作家が参加する「minne(ミンネ)」とは?

f:id:happymk:20160601223902j:plain

みなさんこんにちは。ライフスタイルマーケティングの和田康彦です。  

スマートフォンが急激に拡大する中で、スマホアプリで1点モノの手作りアクセサリーや洋服などを販売できるハンドメイドマーケットプレイスが今大人気です。創作活動に取り組む全国のクリエイターと生活者が、オンライン上で直接オリジナル作品を売買できる手軽さが受けて、前年比2倍以上の勢いで拡大。今回は、主に女性作家が牽引して急成長を続けるハンドメイドC2C市場の実態をみていきます。

●国内最大級サイト「minne(ミンネ)」の登録会員数は20万人超。
国内最大のハンドメイドマーケットプレイスといえば、GMOペパボ㈱が運営する「minne(ミンネ)」です。2012年1月にサービスを開始し、10月にはスマホアプリをリリース。その後多様な決済方法の提供やテレビCMによって利用者や認知度は一気に広がり、2015年3月には登録会員数10万人、今年3月には20万人を突破。1年間で2倍以上の登録作家数の拡大を達成しました。また2016年2月にはスマホアプリのダウンロード数が500万件を突破するなど成長の勢いはとまりません。

●「minne(ミンネ)」の後を追う、「creema(クリーマ)」「iichi(イイチ)」。
minneのスタートより2年早い2010年にサービスを開始した「creema(クリーマ)」は登録会員数は約6万人、2011年にスタートした「iichi(イイチ)」は登録会員数約2万人で、会員数ではminneが2位以下を大きく突き放してトップを走っています。ただ、出品数ではminneの約250万点に対して、creemaは246万点とほぼ同じ規模で肩を並べており(iichiは約42万点)、今後は両社の競争が激しくなることが予想されます。

●リアルイベントにも注力、交流・体験の場を提供。
ネット上のマーケットプレイス以外で力を入れているのが、クリエイターと手作りファンが一堂に会するリアルイベントです。minneは今年の4月、東京ビッグサイトで「minneハンドメイドマーケット」を開催、約3000ブースに1400名以上の作家が参加して行われました。またcreemaも2016年7月23~24日の2日間、同じく東京ビッグサイトにて「ハンドメイドジャパンフェスティバル」を開催。全国で活躍する5000名以上のつくり手が集まる予定で、昨年は53000人の来場者がありました 。

●作家の支援活動を通して人気作家を育てる。
また出展作家の支援活動にも注力。minneは全国各地の大型商業施設での対面イベントを通して作家の活躍の場を増やしています。2016年は1年を通じて、東京・広島・北海道・宮城・福岡の全国5か所の「PARCO」を巡る対面販売イベント「ミンネとパルコのミエルツアー」を開催。イベント限定販売の作品など、会場でしか出会えないハンドメイド作品に触れ、作家と直接話しができる機会を設けることで、人気作家の創出に取組んでいます。

●「minneハンドメイド大賞」の開催で作家の創作意欲を後押し。
また、2015年度からは「minneハンドメイド大賞」を創設。創意・工夫を凝らした作品を発掘・表彰することで作家の活躍の場を広げています。2016年度の募集には2万300点以上の応募があり、ハンドメイド市場の裾野の広がりを示しています。

その他、東京・世田谷と神戸市に「minenのアトリエ」を設け、作家向けの勉強会や作家同士の交流の場としてワークショップの開催にも力を入れています。

●ハンドメイド作家という新しい働き方に注目が集まる。
ハンドメイドC2C市場の拡大に伴って、ハンドメイド作家を新しい働き方のひとつとして選択する女性が増えてきました。通常minneでは、作品が売れた場合、販売手数料として10%をGMOペパボ側に支払う仕組みで、出店料は無料。2016年3月時点で月10万円以上を売上げる作家は1227名と2年前の15倍以上に増えているそうです。ワークシェアリングやクラウドソーシングといったインターネットを活用した新しい働き方が注目を集める中、ハンドメイドC2C市場で活躍するクリエイターは今後もますます増えていくことが予測されます。

☛「生産者志向」と「自己実現の欲求」の高まり。ハンドメイドC2C市場が急成長している2つの理由。
2008年に起きたリーマンショック以降、日本女性のライフスタイルにいくつかの大きな変化が起きています。そのひとつが、単に消費するだけでなく、自ら何かを生み出していくという「生産者志向」の高まりです。例えば、家庭菜園やベランダで野菜を手作りする、梅干しや漬物など保存食を作る。家具も自分で組み立ててしまう。ちょっとした修繕はDIYで自分で直すといった生産者志向は生活のあらゆる面に及び、自ら作家として作品を作り、その売買で収入を得ることができるハンドメイドC2C市場はその代表例といえます。またポイントを増やす達人が生まれたり、モニターや懸賞公募に参加して報酬を得る人も増えてきています。最近ではクラウドソーシングを利用して収入を得る人も増えてきているほか、「メルカリ」や「フリル」などのフリマアプリで収入を得る人も一般的になってきました。実質賃金が増えず節約生活が当たり前となった現在、自ら収入を生み出して少しでも家計の足しにしたいという女性心理は今後も衰えることはないでしょう。

ハンドメイドC2C市場が急成長しているもう一つの理由が「自己実現の欲求」の高まりです。アメリカの心理学者アブラハム・マズローは、人間の欲求には5つの階層があり、ある階層の欲求を満たすと一段階上の欲求に駆られるという「5段階欲求説」を唱えています。それは①食欲・睡眠欲など生きる上で不可欠な「生理的欲求」②危機管理や健康維持などの不安から身を守りたいという「安全に対する欲求」③人から良く思われたい、嫌われたくないという「親和の欲求」④社会的ステイタスを築きたい、人から認められたいという「自我の欲求」⑤自分の能力や可能性を発揮していたいという「自己実現の欲求」の5つです。あらゆるものが満たされた現在、人々の欲求は「自己実現の欲求」を満たす方向に進んでいます。ハンドメイド作家という立場で自分の能力や可能性を発揮できるminne のようなハンドメイドマーケットプレイスは、まさに自己実現を求める現代女性の心理を上手く捉えたニュービジネスといえるのではないでしょうか。