女性を笑顔にする、マーケティングのヒント。

今や消費の8割以上の決定権を握ると言われる「女性消費者」から選ばれ、愛され続けるためのマーケティングのヒントをお届けします。

無印良品の見出す力。

 

みなさんこんにちは。ライフスタイルマーケティングの和田康彦です。

 

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今や世界の25の国や地域に展開し、世界中で愛されるグローバルブランドとなった「無印良品」。その強さの背景には、無印流の「見出す力」があります。

私が今でも鮮明に覚えているのが、「割れ椎茸が、笑った」という広告コピー。今から25年以上も前の1980年だったと思います。まさに無印良品の原点となる商品の誕生です。当時の西友生活研究所が椎茸の使われ方を調査していると、ほとんどが「だしをとるため」ということがわかりました。一方で生産地に目を向けてみると、生地やカタチのいいものは収穫に手間がかり、割れたようなものは売り物にならず捨てていたと言います。「だしをとる」ためだったら、形は完全でなくてもいいのでは?それよりもお手軽な価格で買えれば主婦も喜び、産地にとっても無駄もなくなる。そんな発想から生まれたのがこの「割れ椎茸」だったのです。売り出した価格は通常の3割安。「大きさはいろいろ、割れもありますが風味は変わりません」と安さのワケをきちんと語ることで大ヒット商品につながり、今の無印があるというわけです。

その後は、何百回洗濯しても使う側が満足できる「ホテル仕様のタオル・シーツ」や劣化して壊れやすい部分を外した「合羽橋道具街仕様の柄のない鍋・フライパン」など、シンプルな機能に特化した商品を見つけ、選んで、無印良品流にアレンジして次々とロングセラー商品を生み出していきます。

いいものを見出す活動は国内に留まりません。開発部隊は世界中を歩いて「これはいいな!」と思うものを見つけて、無印流にアレンジしていきます。例えば1984年に発売された「まんま色」セーターは、新疆ウイグル自治区のカシミアやモヘア、南米ペルーのアルパカ、トルコのアンゴラモヘア、イギリスのシェットランドなど
世界各地から良質な原毛を調達して持ち味を活かして製品化しました。、

しかしながら、世界中を歩き回って「これはいいな!」と思うものを見つけるとなると手間と時間とコストがかかります。そこで次第に商社にこの「見出す」仕事を依存するようになりました。その結果集まってきた物は玉石混交状態。無印良品さしさはだんだんと薄まっていき、業績不振を招く結果になりました。敏感に変化を感じ取るお客様からは「最近の無印は薄っぺらくなった」とのお叱りの声。そこで、改めて無印らしさを取り戻すために2003年「ファウンド・ムジ」に取組みます。

世界の生活文化や歴史に根付いた良品を探しだし、世界の優れた日用品から学び、無印良品のフィルターを通して商品化する。というのがこのファウンド・ムジのコンセプトです。つまり、それぞれの国や地域でずっと長く作られているもの、使われているものは全世界どこへ持って行っても受け入れられる。そんな世界中で愛されている商品の魅力を探しだし、アレンジして新しい価値を生み出すことが、使命だったのです。

このファウンド・ムジの取り組みからも大ヒット商品が生まれています。例えば、チェコの「足なり直角靴下」は、チェコのおばちゃんが編んでいた、かかとが直角になった靴下を商品化したものです。日本の靴下はきれいに折れるように通常は120度。編み上げる機械の構造自体が120度で設計されているので仕様変更は困難を極めました。そこで実際にチェコのおばちゃんに日本に来てもらって編み方を伝授してもらい、そこから素材や編み機の開発に挑戦しました。その結果、2006年から2014年までに累計4500万足を売り上げる大ヒット商品になりました。もちろん日本だけでなく海外でも人気のようです。

無印良品の復活を成し遂げた良品計画の松井前会長は「無印良品が転落してしまった理由は「ブランド磨きを怠ったから」と断言しています。ブランド復活のためには「見出す力」を磨いて世界中のニーズに遅れない世界で通用するものを探してアレンジして作り出す。そんなこだわりが、世界中で愛される無印良品を支えていると言っても過言ではないと思います。

小売業の使命って何だろう?って考えた時、最も重要なのは、今お客様が欲しいと思っているもの、これから欲しくなるだろうな、と思うものを集めてきたり、作ったりしてお客様に提案することだと思います。そのためには、生活者のニーズやウォンツ、心の気持ちを読んで、次々に先回りしていくことが重要になります。無印良品流の「見出す力」もまずは生活者の気持ちを理解する力を磨いていくことから始まるのではないでしょうか