女性を笑顔にする、マーケティングのヒント。

今や消費の8割以上の決定権を握ると言われる「女性消費者」から選ばれ、愛され続けるためのマーケティングのヒントをお届けします。

くらしのテーマパーク、無印良品イオン堺北花田店にみる、新たなライフスタイル創造。

みなさんこんにちは。ライフスタイルマーケティングの和田康彦です。

さて、株式会社良品計画は、2010年にオープンした「無印良品イオンモール北花田店」を移転増床し3月20日にリニューアルオープンしました。同店は、無印良品で初めてとなる“食”をテーマとした大型専門売場や、飲食業態「Café&Meel MUJI」、フードコートなどを導入し、全体で4300㎡を超える世界最大の売場となっています。4300㎡という広さは、標準店の約5倍、改装前の11倍という驚きの空間です。

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3月20日のオープン初日、私も早速、神戸から北花田まで約1時間半をかけて新しいお店を見てきました。イオンモール堺北花田は、地下鉄御堂筋線北花田駅を出てすぐのところにあるので、立地的にはとても便利なところにあります。

 

当日は平日ということもあり目立った混雑もなく、モール自体もリニューアルオープン初日とは思えないほど人影もまばらな印象でした。ただ、無印良品だけは入場制限をしており、店内に入るまでには15分ほどかかりました。とはいえ、店内に入ってみるとそれほど混雑した風でもなく、比較的ゆったりと買い物が楽しめました。

 

◆注目は、無印良品初となる「食をテーマにした大型専門売場」

店内に入るとまず天井の高さに驚かされます。広さと高さに恵まれた開放的な空間は、まるで外国の青空マルシェに来たようなワクワクした気持ちにさせてくれます。そして入ったすぐ右側には食事やお茶を楽しめる「Café&Meel MUJI」があり、その奥に、青果、鮮魚、精肉、総菜、加工品や日本酒、ワインといった食関連のコーナーが広がっています。

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無印良品では以前から、衣・食・住という生活の基本の中でも、「食」は最も基本的な営みであり、なくてはならない領域だと考えてきました。これまでにもレトルトカレーをはじめ、パスタやスープ、調味料などを次々に開発。今では主力商品のひとつとして、好業績を牽引する商材に育ってきています。また、主力店では、無印のこだわりを感じるデリやデザート、ドリンク類やパンを店内で手軽に楽しめる「Café&Meel MUJI」の併設にも力を入れて、早くから「コト消費」にも取り組んできています。

 

今回の食の大型専門売場の開設は、無印の食に対する強いこだわりと思いがカタチとなり、顧客が生産者や生産現場とのつながりや交流を通じ、食べ物と人との関係を再度見つめなおすきっかけとなることを目指しています。実は昨年の7月には東京の無印良品有楽町で野菜や果物の販売をスタート。今回の北花田店は、テストマーケティングを終えての本格展開となります。

 

◆こだわりは、「産地直送、旬、地元産、生産者と一緒に開発」。

私が行った日はオープン初日ということもあり、開店記念の特価品がたくさん店頭に並び、主婦がうれしそうに品選びをしていました。特に野菜はこのところ高騰が続いていましたので、和歌山産の大きな新キャベツが128円(税込)、愛知産のブロッコリーが108円(税込)、熊本産竹の子1本498円(税込)など、新鮮な野菜が飛ぶように売れていました。また、生産者の顔が見える野菜や有機野菜も豊富に品揃えされています。

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青果売場の横には、レトルトカレーなどの食品類、その奥には焼き立てパンのコーナー、そして足を進めると大きな鮮魚コーナーがあります。こちらでは、境港から直送されたはたはたや甲イカ、長崎産ののどぐろ、徳島産のほうぼう、こち、太刀魚、黒鯛、鳥取産のアワビ、石川産の甘エビ、大阪産の天然真鯛やハリイカなど、産地から直送された旬の魚がカウンターにずらりと並び、威勢の良い呼び声とともに対面販売されていました。地元の岸和田港や泉佐野港で水揚げされた鮮魚も充実しており、まさにつくる人と食べる人がつながる市場を実現しています。もちろんカウンターの後方には調理場があり、希望に合わせてさばいてくれるので、魚の調理が苦手な女性でも旬の美味しい魚介類が楽しめます。また、調理済みの刺身や寿司も充実。オーダーを受けてその場で作ってくれる海鮮丼のコーナーもあります。

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さらに奥に進むと、精肉コーナーになります。こちらは対面コーナーとセルフコーナーで展開。産地直送の沖縄あぐー豚や生産者と直接開発した宮崎県産黒毛和牛「宮崎ハーブプレミアム」、北海道産牛肉「ホルスタイン」など無印良品ならではの商品が品揃えされており、この日は、宮崎県産豚肉高城の里など開店特価品がよく売れていました。

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精肉コーナーの隣には、総菜コーナーが続きます。こちらではローストチキンや焼き鳥など出来立ての総菜が充実。働く女性や独り暮らしの人にはうれしい品揃えになっています。また注文に応じてコロッケやメンチカツを揚げてくれるうれしいサービスもあります。日本惣菜協会によると2016年の総菜の市場規模は9兆8399億円で前年から2.7%増加。共働き世帯や単身高齢者の増加で、拡大基調にある有望な市場となっており、無印良品にとっても今後注力していくことが予想されます。

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加工食品では、無印良品のコンセプトに基づいて開発したオリジナルの「国産素材を使っただしパック」や「乾燥野菜 国産ひじきの五目ミックス」「発酵ぬかどこ」など料理の基本となる約30アイテムの販売をスタート。また、堺で育まれたうまいもんのコーナーがあり、地元密着の姿勢も好感をもてました。

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◆売場中央にはガラス張りのキッチンとフードコート。食のライブ感を演出。

中央のガラス張りのキッチンの横には48席分のフードコートが用意され、手作りのヨーグルトやカレー、海鮮丼をその場で食べることもできます。特に力を入れているのがヨーグルト。関西圏で採れる牛乳にこだわり、店内で製造しているため、出来立てを楽しめます。またキッチンをガラス張りにすることで、作る人と顧客が調理している時間を共有することができ、ワクワクしながら出来上がりを待つことができます。メニューも「ジビエカレー」や「トムヤンクンのフォー」「豆乳ヨーグルト」など無印流のこだわりが光っています。

 

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◆顧客との対話の場を目指す空間、「Open MUJI

無印良品が考えていることを提案し、顧客や地元で活動するクリエイター、生産者、シェフ、編集者など様々な人と考え、会話し、活動する空間が「Open MUJI」です。私が行った日には、写真家 公文健太郎氏の写真展「耕す人」が開催中で、同時に公文氏とノンフィクションライター菅聖子さんとのトークイベントが開かれていました。会場には多くの人が集まっていて、新たなコミュニティの誕生を予感しました。今後は、「食」をテーマにしたイベントを各種予定しており、無印の「食」に対する思い入れが改めて伝わってきます。また、食に関する本や雑誌も多数品揃えされており、まさに「食のテーマパーク」といっても過言ではありません。

 

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◆くらしの相談に応えるプラットフォーム「MUJISUPPORT」をスタート

無印良品堺北花田では、食の充実とともに、くらしに関する様々な困りごとに応えるためのサポートサービスにも力を入れています。新たに新設された「MUJISUPPORT」では、専用のカウンターを設置。「取付施行サービス」「無印良品のパーツ」「オーダー家具の相談」「サイズオーダーサービス」「くらしの収納相談」「部屋づくり相談」「家具転倒防止サービス」「無料採寸サービス」7つのコンテンツを用意。例えば、空いたスペースにちょうど良く収まる棚がほしい時や割れてしまったポットの蓋だけを新しくしたい時など、大きなことから小さなことまで、顧客の「できたらいいな」や「こうしたい」を専門のアドバイザーがサポートしています。私たちが日ごろ抱えている生活課題に対して耳を傾け、顧客と一緒になって丁寧に解決していこうという姿勢が読み取れます。そして生活していくうえでの様々な「不」の情報を吸い上げることで、新たな商品やサービスの開発につなげていくのだと思います。

 

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◆開放的な空間を生かした、魅せるビジュアルプレゼンテーション

今回の無印良品イオンモール堺北花田店のリニューアルオープンに関しては、「食のテーマパーク」という点に注目が集まっていますが、インテリアや雑貨類といった主力商品売り場にも様々な新しい工夫が見られました。

特に目を引くのが、高い天井を生かしたディスプレイの数々です。無印良品の象徴的な商品使ったアートな演出には無印良品の美意識の高さを改めて感じました。その他の売り場でも、広いスペースを上手に生かした大量陳列が無印の高い商品力をアピールしています。

 

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◆ライフスタイル提案型ブランドとして日々進化する無印良品

このところネット通販の台頭に押されて、国内の店舗販売は苦境に立たされています。米国においても「トイザらス」が大量閉店に追い込まれるなど、小売業の大転換が起こりつつあります。そんな中、無印良品を展開する良品計画は、2018年2月期の売上高にあたる営業収益は14%増の3800億円程度、連結営業利益は、前の期比15%増の440億円程度と報じられており、5期連続で過去最高となる模様です。国内では一部を値下げした効果や厳冬もあって客足が伸び、衣料品販売が好調。中国など海外事業の収益も改善しています。国内既存店への客数は6%ほど伸びたとみられており、特に17年12月と18年1月は既存店で衣料品を購入した客数が前年同月と比べそれぞれ2割以上増加。寒い日が続き、ダウンジャケットやセーターなど秋冬商品の販売が好調だったようです。また定番商品の化粧品やレトルトカレー、「不揃いチョコがけいちご」は安定した人気を得ています。

 

このように、多くの小売業態が苦戦を強いられている中で、良品計画が好調を持続している要因は一体何なのか。私は、今回リニューアルオープンした無印良品イオンモール北花田にすべての答えを見ることができると思います。「生活の基本となる本当に必要なものを、本当に必要なカタチでつくる」という、無印良品の理念を忠実に追及する中で、お客様の「困った」を減らす、お客様の「うれしいを増やす」という生活価値を丁寧に提案していく。そして生活者が喜ぶことをひとつひとつ地道に取り組んで実現していく。そんな無印良品の理念追求型の姿勢に学べる点は多くあります。