女性を笑顔にする、マーケティングのヒント。

今や消費の8割以上の決定権を握ると言われる「女性消費者」から選ばれ、愛され続けるためのマーケティングのヒントをお届けします。

男性マーケターが知っておきたい、女性消費者のこころをつかむ5つのポイント。

みなさんこんにちは、女性マーケテイングラボの和田です。

私は、30数年間にわたって、女性向け通信販売会社で商品開発やメディアプロデュース、マーケティング業務に携わってきました。その中でひたすら考えてきたことは、どうすれば女性のこころをつかんで、売上を伸ばしていけるかということです。今振り返ると、それは小さな実験の積み重ねだったといえます。チームや自分なりに仮説を立てて、商品デザインやネーミングを工夫する。カタログやECメディアの写真の撮り方を変えてみる。プロモーションアイデアについてモニターさんに聞いてみるなどなど、地道な改良・改善の積み重ねでした。しかし30数年も女性消費者と真摯に向き合ってきたおかげで、女性消費者が求めていることや女性消費者を喜ばせる秘訣のようなものを体得することができました。今日は、私のような男性マーケターが知っておきたい、女性消費者のこころをつかむ5つのポイントについてお話しさせていただきます。

●まずは男性脳と女性脳の違いについて理解することから
そもそも男性と女性は全く違う生き物です。脳の構造も違うし、身体の構造も違います。特に脳の構造が違うために、男性と女性は全く別のフィルターを通して世界を見ています。何に興味を持ち、何を心地よく感じ、何を求めているか、という考え方や感じ方すべてが違います。つまり女性マーケティングは、「男性と女性の思考形態はまったく別ものである」ことへの理解から始まります。

●原始時代に形成された男女の脳の違い
人間の脳は、太古の昔、何年も続いた原始時代に形成されたと言われています。その時代、男性は狩りに出て食糧を調達する役割が課せられていました。狩場でライバルと競い合い、勝利したものだけが獲物を手に入れられる。こんな経験から「狩猟本能=競争本能」が自然に備わっていきます。そして効率的に獲物を仕留める方法を模索する中で、論理的に考える力や、空間認知能力、情報処理能力も発達。決断力や一つのことに対する集中力も進化しました。

一方、日本人女性は元来農耕民族であり、一族や集落との調和を図りつつ、集団で子育てしたり、木の実を採集したりといった役割が課せられていました。それゆえ、女性は特定のコミュニティ内でいかに関係を円滑にするかという視点で、周りに同調・共感しようと努める能力が備わったといわれています。そこから、複数のことを同時進行できる能力やコミュニケーション能力、周辺も含めて全体を見渡せる能力が発達していきました。

●男脳と女脳の最も大きな違いは「脳梁」の太さ
人間の脳には、左脳と右脳が存在します。一般的には、左脳は論理的なことを司り、右脳は感覚的なことやイメージを司っているといわれています。男性は主に左の脳を使って考えるため、論理的思考が強い。女性の場合は、左右の脳をつなぐ「脳梁」という連絡橋の太さが男性よりも太いため、左右の脳で処理する情報の流れがよく、男性に比べて情緒や感覚、感情といったあいまいな感覚を感じ取る力に長けています。

●女性思考を理解することからすべては始まる
このような男性と女性の脳の違いは、消費行動にも大きな影響を及ぼしています。今や消費の決定権の80%以上を女性が握っていると言われる時代、女性思考に合わせた商品開発や店づくり、接客、販促といったマーケティングがますます重要になってきています。「自分は女性消費者や女性従業員のことを理解している」と過大評価している企業経営者や男性マーケターのみなさんも、改めて女性思考の特長をしっかり理解しておきましょう。

●女性消費者のこころをつかむ5つのポイントとは
男女の思考の違いが、男性と女性の消費行動の違いを生み出しています。とはいえ、男性が女性脳に近い考えを持っていたり、女性が男性的な考えを持っていたりと、一人ひとり違うことも認識しておかなければいけません。その上で、女性消費者のこころをつかむポイントを整理すると①男性は論理優先、女性は感覚優先、②男性は結果重視、女性はプロセス重視、③男性は自己完結、女性は他者依存、④男性はモノ志向、女性はコト志向、⑤男性は競争好き、女性は共感好きという5つに分けられます。それでは具体的に見ていきましょう。

●女性消費者のこころをつかむポイント① 男性は論理優先、女性は感覚優先
男性は主に左脳を使って考える傾向が強いため、論理的な思考を優先させた消費行動をとります。具体的には、数字で商品の優劣を判断できる機能や性能、つまりスペックを重視して購入する人が大半です。企業内でのコミュニケーションも、売上や利益率、達成率、KPIといった数字が中心で、数字が男性を動かしているといっても過言ではありません。

一方、左脳と右脳をつなぐ連絡橋「脳梁」が太い女性は、情緒や感覚、感情といったあいまいな感覚を感じ取る力に長けています。それゆえ、「カワイイ!」「オシャレ!」「気持ちよさそう!」「美味しそう!」といった感動や驚きが女性のこころを動かす出発点になります。

アップルは、直観的なデザインを通じて、マニュアルなしで操作できるスマートフォンを開発。感覚的でおしゃれなデザインが、世界の女性ファンを一気に増やしました。

「インスタグラム」は、ビジュアルを中心とした感覚的なコミュニケーションツールとして、今や若い女性になくてはならないSNSになっています。

感覚を優先する女性は、男性のようにモノ自体の価値を重視するのではなく、買った後の価値、つまり使用価値をイメージしながら購入します。例えば、お気に入りのソファを見つけた時も、それによって自分の部屋が今までより素敵になるか?ゆったりとくつろぐことができるか?他の家具と調和するか?など、その商品を買うことで得られる「ベネフィット」が購入の決め手となります。北欧家具のイケアが女性に人気なのも、部屋のコーディネートをイメージしやすい売場づくりに徹しているからです。

また、女性は宝探し感覚で「発見する」ことも大好きです。海外旅行に行っても、地元のマルシェや骨董市で、「何かいいもの」を物色することが何よりの楽しみです。国内に目を向けても、コーヒーと輸入食材の専門店「カルディコーヒーファーム」や総合ディスカウントストア「ドン・キホーテ」は、常に新鮮な発見や驚きを提供する売場づくりで女性ファンのこころをガッチリつかんでいます。

「インスタ映え」に女性のこころは動きます。企業もシズル感やライブ感、使用感を感じてもらえる魅力的な画像を発信していくことが大切です。また、文字もゴシックや明朝といった活字よりも、手書き文字の方が伝わりやす場合もあります。女性に人気のフランスの化粧品メーカー「ロクシタン」は、店頭のイラスト入り手書き文字黒板でメッセージを発信。女性客を店内へ誘導することに成功しています。

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女性は、「いい感じ!」「色がすてき!」「私にぴったり!」といったイメージで何を買うか判断します。商品も売り場も接客も販促も、女性をワクワク・ドキドキさせることが成功の近道です。

●女性消費者のこころをつかむポイント② 男性は結果重視、女性はプロセス重視
狩猟時代、男性は狩りに出ていかに多くの獲物を持って帰るかが重要な役割でした。求められたのは手段ではなく獲物の数、結果ありきの世界です。一方女性は、集団生活の中で周りと調和を図りながら生活していく術が求められていました。女性消費者のこころをつかむポイントの2番目は、結果を重視する男性、プロセスを重視する女性です。

私も含めて一般的な男性は、自分が欲しいものがあれば、まずは売り場に直行します。そしてできるだけ時間をかけず効率的に買い物を済ませようとします。つまり買い物も結果重視。自分の欲しかったものが手に入ればそれでOKなのです。アマゾンは、書籍のEコマースからスタートしましたが、当初飛びついたのは合理的な買物手段を求める男性でした。

一方女性は、その日の買い物の目的があっても、あっちをブラブラ、こっちをブラブラ。買いもしない洋服を試着してみたり、化粧品のテスターを試してみたり、いわゆるウインドーショッピングが大好きです。つまり男性と違って、買物のプロセスを楽しむ傾向が強いといえます。

マルシェで買物するのが好きなのも、出品者とのコミュニケーションが楽しいから。目的もなくインスタグラムの画像を見ていられるのも、それ自体がワクワクするからといえます。

今や月間1500万人以上が利用しているフリマアプリ「メルカリ」には、商品へのコメント機能がついています。「もう少し安くなりませんか?」「想像以上に可愛かったです!」など、売り手と買い手が対話を楽しみながら買物できる仕組みが成功の一因と言われています。まさにプロセス重視で女性のこころをとらえた好事例です。

女性に人気の居酒屋の共通項は「トイレの美しさ」です。いまやトイレが清潔で、ある程度広くなくては女性客を呼ぶことは出来ません。女性にとってトイレは、単に用を足すだけの場所ではなく、化粧を直す、スマートフォンをチェックするプライベートな空間です。料理の美味しさはもちろん大切ですが、気持ちよい時間を過ごせる空間にも意識を向けなければいけません。

また女性は、様々な場面で対話を楽しみたいと思っています。お気に入りのショップを覗くのも、気の合う販売員とおしゃべりを楽しみたいから。そこで、新着商品の情報を聞く、コーディネートアドバイスを受ける中で、消費意欲が徐々に高まっていきます。優秀な販売員の共通項はコミュニケーション能力です。EC時代になればなるほど、顧客に楽しい買い物体験を提供できる販売員が求められてきます。

そして、女性は楽しく目的を達成したいと考えています。だから、山登りもマラソンもまずはおしゃれなウエアと道具を揃えることから始まります。女性がワクワクするシーンを想像しながら、商品やサービスのアイデアを考えることが女性マーケティングの鉄則です。


●女性消費者のこころをつかむポイント③ 男性は自己完結、女性は他者依存
一般的に男性は道に迷っても人に聞きたがりません。かく言う私も同じです。多分、男にとって助けを求めるのは弱さの印で、どうしようもなくなった時の最後の手段と考えているからです。反面女性は人に道を聞くのは賢明な方法で、時間の節約になると考えます。

このような男女の違いは買い物の仕方にも影響を及ぼしています。女性はお店で何かを探すとき、手っ取り早く店員に助けを求めます。一方男性は、助けを求めることを嫌い、余計に時間がかかろうが最後まで自分で探そうとします。分厚いマニュアルを横にしながらコンピュータの設定をするのは男性、サポートセンターにさっさと電話してリモートでアドバイスしてもらうのが女性。つまり、男性は自己完結型、女性は他者依存型といえます。

他者依存というと主体性がないようにも聞こえますが、そんなことはありません。女性の他者依存とは、上手に他者の力を借りながら、失敗しないように物事を進めていく女性特有のスキルともいえるのです。

最近でこそEコマースの「レビュー」が商品購入の判断材料となりましたが、女性は昔からクチコミに敏感でした。井戸端会議やテレビ、雑誌から集めた情報をもとに慎重に判断して購入する。家計を預かる女性にとって、買い物で失敗することは決して許されないという思いがそうさせてきたのだと思います。

1999年12月にサービスを開始したコスメ・美容の総合情報サイト@コスメ(アットコスメ)は、クチコミだけでなく、美容に関するブログなど、コスメ・美容に関するソーシャルサイトです。2020年4月現在のクチコミ数は何と1550万件。今や多くの女性が頼りにしている情報源といえます。何かを選ぶときは、多くの人の意見を参考にしながらベストな決定をしたい。そんな女性の他者依存志向をとらえて大成功したといえます。

またこのところ注目されているインフルエンサーやユーチューバーも、役立つ情報を得たいと考える女性の気持ちを上手くとらえて存在感を高めています。また、グルメサイトのユーザー評価やランキングなども、他者の意見を参考にして「失敗しないお店選び」をしたいと考える女性から大きな支持を得ています。「口コミで人気!」「予約のとれない〇〇」「ランキング1位」等は、女性の興味をひく定番コピーです。

主体的に他者の声を聞きながらよりより良い人生を築きたいと考える女性消費者。女性の助けにいつでも気軽に応じられる仕組みづくりが、女性との結びつきをより強固にします。


●女性消費者のこころをつかむポイント④ 男性はモノ志向、女性はコト志向
新しい冷蔵庫の容量が何リットルか気にかけるのは男性。冷凍のピザがちゃんと入るかを気にかけるのは女性。
同じ冷蔵庫を選ぶ際にも男性と女性の視点は異なります。同じように車を選ぶ際にも男性は排気量や最高出力
燃費といった性能を重視するのに対し、女性はボトルホルダーがあるか、雨の日でも子供を乗せやすいか、ベビーカーの積み下ろしはスムースにできるか、といった使い心地を重視して決めます。

つまり、男性はその商品が持つ機能的な価値を重視して選択するのに対し、女性はその商品が自分の生活にもたらしてくれる幸せなシーンをイメージして購入する傾向が強いといえます。女性消費者のこころをつかむポイントの4つ目は、男性はモノ志向、女性はコト志向です。

「ドリルを売るな、穴を売れ」というマーケティングの格言があります。これはモノを売るな、価値を売れという意味なのですが、別の見方をすると、男性が買っているものはドリルというモノであり、女性は「穴を開ける」コトを買っている、と解釈することができます。

例えばあなたがソファベッドを女性に勧めとします。その際重要なのは、ばねの数など技術的に優れていることではなく具体的な用途です。「このようなソファベッドがあれば、お宅の客室をもっと役に立つ場所、例えば仕事場やAVルームに変えることができますよ。そして来客のときは、テマをかけずに簡単にベッドに早変わりできるので、ホームパーティに招いた友達にも気軽に泊まっていただくこともできますよ」。ソファベッドがあることで生まれる、新しい幸せな生活を提案する。女性にはモノではなくコトに焦点を当てて訴求することがポイントです。

大阪梅田の阪急百貨店本店は、まさにコト志向の女性を取り込んでいつも大賑わいです。「モノを並べるだけの旧来の売り方では消費者の関心は呼べない。直接の収益は生まないが、「買いたい」という思いを抱かせるための仕掛け作りに知恵を絞る。」との考え方のもと、9階の催し会場「祝祭広場」では、「パンフェア」や「旅するSAKE」「バレンタインチョコレート博覧会」「ニューヨークフェア」など毎週ユニークなイベントを開催して買い物客を楽しませてくれています。また買い物の合間に息抜きできるカフェもいたるところにあって、おしゃべり好きな女性を喜ばせています。

モノ消費からコト消費の時代へ。これからは、商品を使うことで生まれる幸せな体験や時間を積極的に伝えていくことがおすすめです。売場やECサイトもお客様の想像力を掻き立てるものに設計しなおしていきましょう。

●女性消費者のこころをつかむポイント⑤ 男性は競争好き、女性は共感好き
男の子は他の子と遊べるくらいに成長すると勝ち負けのつく競争的なゲームをするようになります。こうしたゲームやスポーツを通して人生のルールを学び、グループ内で優位な地位を得ようと努力します。一方、女の子はおままごとが大好きです。お家ごっこやお店ごっこ、お医者さんごっこなど、それぞれの役割を演じることで相手に対する思いやりや共感が自ずと芽生えてきます。

女性消費者のこころをつかむポイントの最後は、男性は競争好き、女性は共感好きです。男性の競争好きも女性の共感好きも、やはり太古の昔に形成された男女の脳に起因するものといえます。

身近な例でみてみましょう。不要になったモノを売り買いできる代表的なインターネットサービスには、フリマアプリの「メルカリ」とオークションサイトの「Yahoo!オークション(ヤフオク)」があります。メルカリの利用者には女性が多く、ヤフオクの利用者には男性が多いのが特徴です。ヤフオクの醍醐味は競り合いです。なかなか手に入らないマニアックなお宝系のモノを制限時間ギリギリに高値をつけてライバルに勝つ。そんな快感が、競争好きな男性ファンを引き付けています。一方メルカリは、夜お風呂やベッドの上で何となく覗きに行って、これっていいなと共感した商品があると、出品者さんとやり取りしてポチっと購入のボタンを押す。そんなプロセスが忙しい女性のこころを癒しています。

このように、メルカリには競争心や「高く売りたい」気持ちよりも、「共感できる人に売りたい」「安心・納得して買いたい」という女性ユーザーが多く集まっています。対照的にヤフオクは、できるだけ高く売りたい側と、できるだけ安く買いたい側、どちらも競争心がポイントになっていることがわかります。

昨今の女性の共感は「いいね!」に表れます。いいね!と共感してもらうためには、あなたの会社にまつわるニュースや情報を伝えて、女性のお客様と親密な関係になっていくことがポイントです。例えば、チラシやホームページには店長やスタッフの顔写真を入れてメッセージを載せる。試食や試飲などの場を積極的に増やしてお客様の意見を聞く。ワークショップを開催して地元のコミュニティづくりを応援していく。スタッフブログやSNSを通して身近な情報をどんどん発信していくなどなど。大きなお金をかけて広告しなくても、今すぐできることがたくさんあります。要はリアルとネットの場で、お客様と対話を積み重ねていくことが大切です。女性はおしゃべりが大好き。あなたの会社に満足してくれたお客様は、知り合いに進んで広めてくれるでしょう。

さらに女性の「いいね!」を増やしていくためには、細部にこだわることが求められます。「あのシャンデリア、可愛いと思わない?」「あそこのディスプレイに使っている小物、売ってくれないかな?」「あの店員さんが着けているピアス、私も欲しいわ」。女性と買い物していると商品はもちろん、周辺情報に敏感に反応していることに気付きます。よきにつけ悪しきにつけ、女性は細かいことを認識する力に優れています。ディテールまで気をつかうことで共感創造力を高めていくことができます。

今、人や社会、地球環境、地域に配慮した「エシカル消費」に関心を寄せる女性が増えています。お客様はもちろん従業員や社会に対しても優しい企業が求められる時代になりました。これからは「愛」や「思いやり」が女性の共感を集めるキーワードです。

女性が経済を主導する時代、女性に幸せを提供できる企業だけが繁栄できます。そのためには女性の感情に訴えることがますます重要になっていくでしょう。