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ニューノーマル時代をリードする、鳥取発のバッグメーカー、バルコスがTOKYOPROに上場

鳥取県倉吉市に本社を構えるバッグメーカーのバルコス(山本敬社長)は2020年8月28日、東証TOKYO PRO Marketに新規上場を申請しました。上場日は10月2日を予定しています。

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バルコスは1991年に設立。バッグブランド「バルコス(BARCOS)」「バルコスジェイライン(BARCOS J LINE)」「ハナアフ(HANNA-FU)」「バルコスブルー(BARCOS BLUE)」などを抱え、クリエイティブなレディスハンドバッグや財布などの皮革商品の企画・デザインを行い、国内外で販売しています。

 

またテレビや雑誌、そしてインターネットでの販売でも、リーティングカンパニーの地位を築いているほか、インフライトマガジンへの商品企画、アパレルメーカー、グローバルブランドへのOEM・ODMなど、他社との共同企画商品も提供しています。

 

海外では、ニューヨークで開催される展示会”COTERIE”(コーテリー)へ出展、またミラノで開催される世界最大規模のハンドバッグ展示会“MIPEL”(ミペル)にジャパンブランドとして唯一継続出展を果たし、過去三回デザイン賞などを受賞しています。

 

現在は、パリで年4回開催されている “PREMIERE CLASSE”(ブルミエールクラス)にも出展し、世界的にそのデザイン力と商品力が高く評価されています。

 

07年にスタートした「ハナアフ」は、折り紙からインスピレーションを得た6通りに変形できるバッグ“アリエス(ARIES)”が注目を集め、アメリカやアジアなど、世界中の百貨店やセレクトショップで扱われています。生産では中国・広州に自社サンプル専門工場を構え、迅速で大量にサンプルを制作できる体制を有しています。

 

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◆コロナ禍の中でも業績は好調

2020年12月期の見通しは、売上高が前期比44.3%増の44億円、営業利益は同51.9%増の4億7200万円、経常利益が同52.7%増の4億5100万円、純利益が同81.6%増の2億9100万円を見込んでいます。新型コロナウイルスの影響で店舗事業が苦戦を強いられていますが、鳥取県が行う新型コロナウイルス感染対策事業のマスク販売あっせんに協力したことや、オンライン事業の強化などで店舗事業の損失をカバーしています。

 

◆倉吉市内の6畳一間からスタート

山本敬社長は、1966年大阪市生まれ。12歳の時に両親が離婚し母親の実家がある倉吉市へ。県立倉吉東高校卒業後、大学進学とともに上京。卒業後、大手出版社の女性誌などのカメラマンとして活躍していましたが「商売のほうがクリエイティブ」だと、20代半ばの1991年、倉吉市内の実家の6畳一間で独力で創業しました。「(実業家として)日本一になりたい」という思いから、当時規模が小さかったというバッグ業界で勝負を挑みました。社名のバルコスは、スペイン語のbarco(船)から、会社が大きく発展するようにという願いを込めて名付けました。

 

ワニ革のバッグなどを卸売りしていた97年、ドイツの人気バッグブランド「PICARD(ピカード)」のメーカーから声がかかり、同社の日本総代理店に。日本向け商品を企画して商品開発のノウハウを学び、独自商品の製造もスタート。イタリア・フィレンツェに支社を置き、世界20カ国以上に進出。日本全国の大手百貨店等と取引があります。

 

◆倉吉から世界へ

1991 年、バルコスは鳥取県のほぼ中央に位置する倉吉に誕生しました。市内には古を思わせる白壁の土蔵が並び、あたりは緑豊かな田畑が広がるのどかな地域です。

 

ファッションに限らず、産業のほとんどは大都市に集中し、多くの人を呼びこみ、トレンドや独自の文化を形づくってきました。しかし、近年では必ずしも都市が物事の発信地とは限りません。

情報や物流の発達により、地域産業の魅力を全国、そして世界に発信し注目を集めている場所も数多く存在します。

 

同社も、品質の高さを背景とする日本ブランドのバッグとして、世界のステージに向けて挑戦、独創的な魅力をとどけています。

 

合言葉は「倉吉から世界へ」。made in kurayoshi のバッグが、日本を代表するバッグとして世界にひろがり、人の心を豊かにつつみこむことをバルコスは夢見ています。

 

山本社長は、「ヨーロッパに東京のような大都市はない。適度に田舎で、みんな豊かなんです。ワインづくりやシャツの縫製などで、いいものに付加価値をつけて商売をしている。日本もそうするべきです。地方で貧しくではなく、地方で豊かに暮らす。県内にそんな企業が2社、3社と出てきたらモデル地域になるかもしれない。自分が実績を残して、若い人に伝えたい。」

 

「ブランドによるイメージ戦略が上手なヨーロッパ型を目指していきたい」

 

「フィレンツェにグッチがあるんだから、倉吉にバルコスがあっても不思議じゃないはず」

 

「イタリアでは、名だたるデザイナーがフィレンツェの出身で、フェラガモはローマでもミラノでもなく、フィレンツェで起業しました。結果的にフィレンツェがファッションの街になったのであって、真面目にやっていいものを作り続けるのには、本社の場所は大都市じゃなくても、どこでもいいということです。」と倉吉で創業した思いを語っています。

 

◆目指すのは「愛される質」

同社のホームページには、バッグづくりにかける熱い思いが下記のように綴られています。

心からほんとうにいいと思ってもらえるバッグをつくりたい。バルコスの想いは、単純すぎるほど正直でまっすぐです。それは、デザインの豊かさだけではありません。素材や縫製の確かさ、機能性といったものだけでもありません。手にするたびにときめきを覚え、その喜びがいつまでも長くつながっていくものであること。目に映る品質を超えた先にある、愛される質を求めつくり続けています。倉吉という小さな場所から、日本ブランドとして世界の大きなステージへ。バルコスはきょうも夢と情熱、そのすべてをバッグづくりに捧げています。

 

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◆「響きあう情熱」が世界から支持される商品を生み出す原動力

また、「創造にとって大切なのは、既存の概念にとらわれないしなやかな発想力。それを表現するのは若さ、自由さ、それらを妨げることのない空気だと考えます。バルコスのデザイナーは自ら考え、その答えを言葉とビジュアルで明確に形にしていきます。そのあふれる熱意と瑞々しい感性こそが、型にはまらない独創的なスタイルにつながっています。日本の新しい質を備えたバッグは、ここから生まれます。」と、世界中から支持される商品を生み出す原動力は「あふれる情熱」にあることをメッセージしています。

 

◆付加価値を生み出すブランドづくりで世界へ進出

バスコスは、ビジネスのスタート当初、自社にブランド力がなかったことから、バッグに「爬虫類皮」という付加価値を持たせて販売。その後、流通業のトップである百貨店への参入を狙い、日本での販売代理店を探していた「PICARD」の代理店になり、「ドイツバッグメーカーの販売代理店バルコス」という肩書を得て、百貨店事業参入に成功。「PICARD」のバッグは当初はデザインやサイズが日本人に合わず売れなかったのですが、中国の工場で水牛皮の日本仕様のバッグを作ったところ、これが人気となりました。

 

その後「PICARD」に加え、百貨店で自社ブランドのバッグや雑貨販売を開始し、事業は拡大。しかしディベロッパーの商業ビルテナントでの直営事業に進出したが失敗。顧客は「百貨店で扱っているバッグ」を購入していたということに気づいたことから、ビジネスモデルについて再考し、ライバルの少ない海外事業での展開を考えました。

 

2007年1月、他社と差別化した付加価値をつけるため、イタリア(フィレンツェ)に支店を開設。

2007年9月には、日本企業として初めてミラノの国際皮革製品見本市「MIPEL」に出展を開始。3回目となった2008年秋には、世界491社の中で、 「デザインイメージ賞」上位5社にノミネートされました。そして、著名なイタリア人デザイナーにブランドの監修を依頼し、いち早くトレンドを取り入れる工夫をしました。

 

「MIPEL」への出展や、トレンドをすばやく製品生産に活かす仕組みにより、国内でのOEMに加え、相手先のブランド名で設計から製造までを手掛けるODMが急増。セレクトショップにも取引が一気に広がりました。また北欧などを始め、海外にも販路が拡大しました。

 

◆「生産は適材適所」という考えに基づき、中国の広州にサンプル工場を開設

バルコスの強みの一つが、中国につくったサンプルだけを作る自社工場。サンプルだけを月に500個作れるようになっており、他社との差別化の武器になっています。

 

製造工場は、ラインを止めてまでサンプルを作るのを嫌がるので、細かい修正に応じてもらえない場合があり、急ぎの仕事が頼みにくいという実情があります。一方、サンプル専門工場ならならレスポンスも早く、ポケットをあと何ミリ下げてもう1回作って、などの注文にも素早く対応できます。

 

OEMの場合、速さは他社では真似できないことなので大変有利になります。また自社ブランドでも、サンプルをモニターしてもらって納得がいくまで何度でも作り直すことが当たり前にできるのでお客様に満足していただけるモノづくりができます。

 

この、完成度が高いサンプル作りもバルコスの付加価値のひとつであり、これができるブランドはなかなか見当たりません。サンプルを見せれば、どのレベルの仕事ができるかプロはわかるので、商談も早く、世界各国からの注文には、言葉よりサンプルを見てもらったほうがわかりやすいというメリットもあります。

 

◆海外で大ヒットしている、折りたためるバッグ「Hanaa-fu」

バルコスは、いかに海外の女性に日本のブランドのバッグを持ちたい、バルコスが欲しいと思ってもらうかを考えています。『Hanaa-fu(ハナアフ)』は折りたためるバッグでありながら、どのたたみ方でも美しい形と機能性を備えてます。この技術と発想が海外でウケて「折り紙のようだ」「高品質と高機能が日本らしい」と高い評価を得ました。世界では『Hanaa-fu』がバルコスのイメージになっています。この成功により、バルコスが作るとバッグも楽しくなると印象づけることができました。

 

◆最高品質のラグジュアリーブランドの育成

一方、国内向けには、世界基準のラグジュアリーブランド『バルコスJライン』を提供しています。Jラインは革なめしから、裁断、縫製、彫金にいたるまで、すべて日本製。日本最高峰の職人たちが、徹底的にこだわった日本のモノづくりを追求しています。この伝統の技に日本が世界に誇るクリエーターの感性を掛け合わせることで、これまでにない、世界に通用する高感度なラグジュアリーレザーブランドを作り上げました。同社は、ジャパンラグジュアリーの創出は、日本ならではの文化、伝統を守り、新たな形で発展させていくことにつながっていくと考えています。

 

◆バルコスから学ぶ、「ニューノーマルの時代は、地方発世界へ」

新型コロナウイルスの感染拡大が続き、東京一極集中の弊害やテレワークの推進に注目が集まっています。バスコスは、今から約30年も前に、大都市一極集中に疑問を呈し、鳥取県倉吉市からファッション商品を発信することにチャレンジしました。当時銀行からは「倉吉でファッションなんかできるわけがない」って。みんなから笑われていたそうです。地方に工場や小売店はあっても、ファッションブランドなんてゼロの時代。当然といえば当然といえます。

 

一方で、ヨーロッパは自国の各地に都市が点在しています。大都市はそんなに多くなくて、それぞれが小規模。たとえばバルコスの子会社があるフィレンツェは、だれもが知っているイタリアの歴史ある街のひとつですが人口は約35万人とそれほど多くありません。観光客が年間約300万人訪れる街で、ファッション、農業、観光で成り立っています。市街中心部は「フィレンツェ歴史地区」としてユネスコの世界遺産に登録されており、1986年には欧州文化首都にも選ばれています。

 

ニューノーマルの時代はデジタルシフトの重要性が叫ばれていますが、一方でこれからの日本人が目指すべきは文化的に成熟したヨーロッパが先行するローテクの付加価値づくりです。アフターコロナの時代は、世界に認めてもらえる文化度の高さでモノを売る時代です。