女性を笑顔にする、マーケティングのヒント。

今や消費の8割以上の決定権を握ると言われる「女性消費者」から選ばれ、愛され続けるためのマーケティングのヒントをお届けします。

薬にも「使いやすさ」が求められている。

みなさんこんにちは。ライフスタイルマーケティングの和田康彦です。

 

バブル崩壊から20数年。日本は長い低成長経済に苦しんでいます。そんな中でも、順調?に伸ばしている分野があります。みなさんはすぐにお分かりになりますか?

 

答えは「医療費」。厚生労働省によると、2015年度の医療費は過去最高の41.5兆円。2005年は33.1兆円でしたので、この10年間で8兆円以上増えたことになります。何と13年間連続で過去最高を更新し続けている成長?市場なわけです。

 

この拡大し続ける医療費問題を解決する手段として期待されているのが「ジェネリック医薬品」です。ジェネリック医薬品は、新薬の特許期間などが過ぎた後に他のメーカーから同じ有効成分で、効き目、品質、安全性が新薬と同等であることを条件に、国から承認されている医療用医薬品のこと。低価格で購入できるジェネリック医薬品は、私たち患者の負担を軽減するだけでなく、医療費抑制にもつながる優れものといえます。

 

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さて、2017年3月28日付日本経済新聞朝刊に、ジェネリック医薬品メーカー大手の東和薬品株式会社 吉田逸郎社長のインタビュー記事が掲載されていました。

 

東和薬品は、1951年に創業。2016年3月期の売上高は821億1500万円(前年比14.9%増)、営業利益111億3400万円(営業利益率13.5%)の優良企業です。循環器系医薬品に強く、開業医中心から調剤薬局との取引を拡大することで売上を伸ばしてきました。開発面においても、独自の「RACTAB(ラクタブ)技術」による水なしでも飲める口腔内崩壊錠(OD錠)は、患者が飲みやすいように口の中でのとけやすさを保ちながら、湿気に強く、優れた錠剤硬度を両立。また、苦みを包み込む「マスキング技術」やザラつきを抑える「微粒子化」など、「飲みやすく、使いやすい」という付加価値の高い製剤の開発に努めています。

 

インタビュー記事の中でも、ジェネリック薬品市場の今後について、「やはり高い品質を目指すことだ。改良・改善にある程度コストをかけていい製品をつくらないと将来が展望できない。そのために価格は多少上がっても、よろこんでもらえる製品であれば需要はあるはずだ」

 

「例えば気温や湿度が高くても有効成分が分解せず長持ちするようなジェネリック製品をつくることだ。高齢患者は増えているが、薬をきちんと保管し服用するという点で心もとない面もある。そのときに長持ちする薬をつくれば安心だ。飲み忘れているうちに有効期限が過ぎて捨てられる薬が大量にあることが最近話題になっているが、こういった無駄も減らせるとアピールできる」と述べています。

 

また、「自動車産業で言えば、もっと安全な車をつくって成長していくことなどが考えられる。医薬品産業では、今はまだ治せない病気を治せるような新薬を開発することに価値があるだろう。新薬を開発するわけではない我々のようなジェネリック業界においても、さらに薬を使いやすくするための改良・改善に力を入れることが大切だ。そのような製品であれば、価格だけでは判断されないだろう」と、患者にとって「使いやすい」薬を開発することの重要性を説いています。

 

薬の本質的な価値を考えると、「病気を治す、回復させる」という機能的な価値が重視されるのは当然です。しかし一方で、患者の立場に立った「飲みやすい」や「長持ちする」といった使用価値を追求することも、高齢化がますます進む現代にあっては重要な視点といえます。

 

吉田社長は、「企業の発展や経済の成長は重要だが、何のために成長させるのかをよく考えたい。この世で一番大切なのは人だ。人が充実した人生をおくり、幸せに暮らせることこそが重要だ。人の幸せのために産業が貢献していく中で発展してこそ意味がある」と、独自の経営論を語っています。まさに「幸せマーケティング」の実践で企業価値を高めていらっしゃる素晴らしい経営者だと思いました。