女性を笑顔にする、マーケティングのヒント。

今や消費の8割以上の決定権を握ると言われる「女性消費者」から選ばれ、愛され続けるためのマーケティングのヒントをお届けします。

パクチー好きの「好き力」が生み出した「パクチーブーム」。

みなさんこんにちは。ライフスタイルマーケティングの和田康彦です。

 

突然ですが、みなさんは「パクチー」が好きですか?「パクチー」と聞いてあの独特の味と香りを思い出した方も多いのではないでしょうか。。

 

アンケートサイト「みんなの声」が2017年7月8日~22日に実施した「あなたはパクチーが好き?それとも嫌い?」調査によると、最も多かった答えが「大嫌い」で1188票(32%)、次いで「食べられるけど好きじゃない」1058票(28%)、「嫌い」953票(25%)が続きました。一方で「好き」は346票(9%)、「大好き」213票(6%)で、パクチーが好きな人はわずか15%に過ぎないという結果になりました。

 

そんな嫌いな人の方が圧倒的に多い「パクチー」が、このところ一大ブームになっています。パクチーとはセリ科の植物でタイ語の名称。英語ではコリアンダー、中国語では香菜(シャンサイ)と呼んでいます。生産地は主に東南アジアから地中海沿岸に広がる地帯で、生命力が強くて育てやすいハーブの一種です。

 

パクチーは、もともとはベトナムの麺料理「フォー」などエスニック料理に欠かせない香辛料として、一部のパクチー好きの人たちだけに強烈に好まれてきました。ところがこのところ、パクチーを使った食品や手軽に料理できる調味料などが増えてきて、着実に料理の主役に躍り出てきているのです。

 

パクチーブームの火付け役になったのは飲食店。タイ料理店でパクチーを追加する「追いパク」が話題になり、その後パクチー専門店が続々オープン。これでもかと盛った鍋やパクチーの天ぷら(パク天)などファンも垂ぜんする料理がSNSで拡散することでブームが急加速しました。強烈なアンチパクチーがいる中で、パクチー好きをカミングアウトすることで共感・反論の恰好のネタに。芸能人も投稿に加わることでSNS上でも大いに盛り上がりをみせました。また、熱狂的なパクチー愛好者たちのことを「パクチスト」、パクチーの味や香りが極めて強いことを「パクパクしている」というなど、新たな流行語も生まれています。

 

このブームを追い風に食品メーカー各社は、パクチーを使った加工食品の開発を加速しています。1992年にいち早く生パクチーを発売したヱスビーでは、2017年2月にチューブ容器入り調味料「きざみパクチー」を新発売。細かく刻んだパクチーにライムと魚醤を加えてペースト化したもので、エスニック料理だけでなく冷奴や空揚げなどに合うことから販売は計画の1.5倍で推移。同社では現在13種類のパクチー関連食品を発売しています。その他、即席ラーメンや焼きそば、ポテトチップスやドレッシングなどパクチー商品は広がりをみせており、今ではコンビニでパクチーおにぎりまで買えるようになりました。この開発ラッシュを後押ししているのが、国産パクチーの増産です。国産は栽培法や生育条件の違いにより、東南アジア産に比べて香りや味がマイルド。生産量が急増しているものの、需要に供給が追い付いていない状況のようです。

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画像は日経トレンディネットより

今年の5月31日~6月4日には、東京新宿区で「パクチーフェス(東京クラフトビールマニア主催)」が開催され、4万人のパクチーファンが集結。5日間で約300kgのパクチーを消費しパクチー好きの胃袋を満たしました。

 

かつてはエスニック料理の薬味として脇役だったパクチーですが、熱狂的なパクチー好きの「好き力」によって、今では食の新たな主役に転じてきました。専門店以外でもパクチーメニューを目にする機会が増えていて、一部の愛好家だけの盛り上がりではなくなってきています。消費者の食の好みが多様化し、以前よりもヒット商品を生み出しにくくなっているといわれる食品・外食業界の中で完全に市民権を得たといっても良いでしょう。

 

ここまで、圧倒的少数のパクチー好きが、これまでの常識を覆して新たなマーケットを創造してきた事例をみてきました。あらゆるものに満たされた成熟化時代は、今回のパクチーブームのように、○○好きが放つ「好き力」が世の中を動かす原動力になっていくのです。。