女性を笑顔にする、マーケティングのヒント。

今や消費の8割以上の決定権を握ると言われる「女性消費者」から選ばれ、愛され続けるためのマーケティングのヒントをお届けします。

消費者視点に立って、小売りの未来を考えよう。

みなさんこんにちは、ライフスタイルマーケティングの和田康彦です。
日本の小売業界は今、人手不足に悩みネット通販の攻勢に押されています。ローソンは11日、2019年度の店舗数の純増をゼロにすると明らかにしました。セブン&アイ・ホールディングスも19年度の国内コンビニの店舗数の増加幅を150店と40年ぶりの低水準に抑えるようです。ここまで大量出店で大量消費にこたえたビジネスモデルは転換期に来ています。

昨日2019年4月11日付の日本経済新聞朝刊では、「小売りの未来を探る」と題して、丸井グループ社長 青井浩氏、バローホールディングス会長兼社長 田代正美氏、HONZ代表 成毛真氏、カインズ社長 高家正行氏の4氏が小売りの未来についてそれぞれの考えを述べています。

4氏に共通するのは、「小売りは売り手本意ではなく、顧客の価値に対応したモデルへの変革が重要」という消費者起点に立った改革の必要性を説かれています。

丸井グループ社長 青井浩氏は、「あらゆるモノがネットで買えるようになり、モノを売るだけでは実店舗は存続できなくなる。体験という価値を提供し、売り上げを前提としないビジネスに転換していかなければならない。」「これまでは絞り込むのがマーケティング理論だった。パンプスは成人女性の3割が履きたくても買えなかった。ほぼ23.5センチの前後1センチのサイズしか作らないからだ。これでは豊かな社会といえない。サイズを広げたら、LGBT(性的少数者)や障害者の方も買ってくれた。」と、一人ひとりの消費者ニーズに向き合うことの大切さを語っています。

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バローホールディングス会長兼社長 田代正美氏は、「食品スーパーは、何でもそろえるのでは勝てない。大したことないなら、魚の扱いもやめればいい。バローHDもこだわりの店を展開している。例えば、グループの「タチヤ」は売上高に占める生鮮の構成比が80%に達し、広域から顧客が集まる。業績がいいので週に1回は休み、年始とお盆のシーズンは1週間休業する。通常のスーパーの2倍以上の精肉をそろえる店も作った。顧客から「コストコに行かないで済む」との声を聞いた。もはや同業のスーパーと価格などで競争する時代は終わった。」と専門性を磨いて高度化する顧客ニーズを満たすことが勝ち残りの条件であると述べています。

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また、HONZ代表 成毛真氏は、「小売業に必要なのは、消費者一人ひとりの個人データの収集や分析ではない。売り場の情報は意味があるが、個人データは季節や年齢、家族構成、居住地、所得の変動といった詳細まで読み込まなければ生かすのは難しい。小売業はビッグデータの解析などに余計な経費をかけず、消費者に買いたいと思ってもらえるモノを用意し、買いたい価格で販売するという基本を追求すべきだ。」「伸びるのは、持ち帰りの総菜や弁当など中食市場だ。外食も次々と中食にシフトしていく。たとえば飲食店2店舗分ほどのスペースを5つに区切り、唐揚げやとんかつ、寿司などの売れ筋を集めて「イオンモールの超ミニミニ版」をつくれば消費者に支持されるようになる。食品スーパーが先手を打って、そのような店をつくるかもしれない。」と、消費者のニーズに向き合って、基本に戻ることの重要性や具体的なアイデアを提示しています。

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そして、カインズ社長 高家正行氏は、「量販チェーンはどうしてもマスで考える志向が強い。勝ち残ったのはそれを究めたからだ。だが消費者の多様化は進み、パーソナライズ対応が重要だ。モノから体験型のコト志向も強まる。小売りは売り手本位ではなく、顧客の価値に応じたモデルに改める必要がある。カインズでは絶対に必要な日用雑貨だけを扱う部門、こだわりの強いライフスタイルに応じた部門、そしてプロの職人向けの部門と社内を3つに分けた。」「アマゾンのようなネット小売りは勢力を増すだろうが、彼らは需要を創造しているわけではない。我々の強みはPB(独自企画)商品を作り、地域に密着している点だ。強みを生かし、必要なデジタル戦略を磨けば、同業の競争から逃れられる。いずれ「ホームセンターで買う」でなく「カインズで買う」という独自の消費スタイルを生み出せるように変身していきたい。増収増益の今から始めないと10年後には時代遅れになる。」と消費者の多様性に目を向けて、新たな需要を創造していくことがこれからの時代に重要になると語っています。

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以上のように、4氏に共通する考え方は、少子高齢化、多様化する消費者のニーズの変化に耳を傾け、新たな消費者価値を生み出すことの重要性です。

一方で躍進するアマゾンのように、消費者起点に立ったうえで、デジタルシフト、プラットフォーム化、AI化を推進していくことがますます重要になってきます。