女性を笑顔にする、マーケティングのヒント。

今や消費の8割以上の決定権を握ると言われる「女性消費者」から選ばれ、愛され続けるためのマーケティングのヒントをお届けします。

米D2Cベンチャーの「キャスパー」は、寝具ではなく「眠り」を売るライフスタイルブランドだ。

みなさんこんにちは。

2017年度のユーキャン新語・流行語大賞トップ10にも選ばれた話題の言葉「睡眠負債」。睡眠負債とは、睡眠不足が借金のように積み重なってあらゆる不調を引き起こす状態のことをさします。日本は睡眠負債大国と呼ばれています。事実、平成29年の厚生労働省「国民健康・栄養調査」によると、20歳以上の平均睡眠時間は6時間未満がなんと約4割。同調査で「睡眠で休養が十分にとれていない」と答える方もここ数年で右肩上がりに増えています。睡眠負債が蓄積すると、免疫力が下がって風邪をひきやすくなったり、肥満や高血圧などの生活習慣病のリスクも高まったり、肌の保湿力が悪くなったり、精神面でもうつになりやすいと言われています。また、死亡リスクが高まるといった報告もされています。

睡眠に対する関心は日本だけでなく、欧米でも高まっているようです。米国では、消費者が睡眠の重要性について気づき始めており、良質な睡眠への投資を惜しまなくなっているという報告もあります。いびきを止めてくれるベッドやマットの温度調節をしてくれるアプリなど、「スリープ・テクノロジー」も注目されています。

ちなみに世界のマットレス市場は2016年の263億ドル(約2兆8000億円)から2021年には368億ドル(約4兆円)に拡大するという調査報告もあり、多くの起業家や投資家が伸長市場として関心を寄せています。

そんな背景のもと、2014年にアメリカで誕生したのが、マットレス販売の「キャスパー(CASPER)」です。キャスパーは、このところ話題になっているD2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)ブランドとしてスタート。D2Cとは、ネット起点で顧客とガッチリつながってモノづくりするECが主販路のブランドのことで、日本国内でも次々に誕生しています。

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今回は、2020年1月、D2Cブランドとして初めて上場を果たしたキャスパー成長の戦略について分析していきたいと思います。

① 「寝具選びは面倒」というインサイトに注目
アメリカだけでなく私たち日本人でも、ベッドやベッドマットレスを購入するのは重労働です。百貨店やショールームに足を運び、マットレスの硬さや寝心地を確かめて購入する人が多いと思いますが、短時間の試用では、自分の体や眠っている時の姿勢に合っているのかは、なかなか見極めることができません。また、品質や値段も幅広く、どれを選んだらいいのか分からないという人も多いのではないでしょうか。その結果ショールームの担当者の言いなりなってしまったり、買った後で後悔したりといった経験をしている消費者が多数存在していたのです。キャスパーは、このマットレス選びの面倒さを解決したいという消費者インサイトに注目。2014年にローンチしたベンチャー企業です。

② 高品質・低価格なマットレスを実現
キャスパーは、それまでのサプライチェーンや製造工場を見直し、小売店やショールームを介さない直販モデルを採用。4層のフォーム素材を使用して高品質で低価格なマットレスを開発することに成功しました。柔らかいのに体をしっかり支えてくれるベッドマットレスは、高級メーカー「テンピュール・ペディック」の製品よりはるかに安く、節約志向のミレ二アル世代の心をつかんで大ヒットしました。スタートから1年半くらいは1種類のマットレスのみの販売でしたが、現在はマットレス、シーツ、ベッドフレーム、犬用ベッドなど27種類を展開。マットレスは500ドル(約55000円)~950ドル(約10万円)と米国内では買いやすい価格に設定しています。

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③ 購入時の心理的障壁を取り除くマーケティング施策
オンラインのみでの販売でスタートしたキャスパーは、購入時の心理的障壁を取り除くために3つの大胆なマーケティング施策を導入しました。一つ目は返品が自由にできる「100日間トライアル」、もう一つが「10年間保証制度」、さらに高層階や入り口の狭い部屋でも簡単に納入できる「冷蔵庫サイズのボックス」の開発。これらのマーケティング施策によりユーザー層を次々に拡大。特に、所得レベルが高くても財布の紐は固く、品質は求めるがコストはかけたくないと考えるミレ二アル世代に支持されて徐々にファンを増やしていきました。

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④ ユーザーの意見を取り入れて進化させるプロダクトスタイル
D2Cブランドの強みは、ネット起点で顧客とガッチリつながってモノづくりできることです。キャスパーもユーザーからのフィードバックを取り入れたプロダクト改善スタイルを構築。一度売ったら終わりではなく、ユーザーと共により良い製品に進化させる取り組みが高い顧客満足度を生み出しています。また、ユーザーを招待してプロトタイプの試用イベントを実施したり、睡眠に関して熱心なユーザーをエバンジェリストとしてコミュニティ化したりといったといったファンづくりマーケティングにも注力。その結果、Facebookは66万人、Instagramは16万人、Twitterは11万人とSNSフォロアー数も年々増加しています。

⑤ D2C型店舗の展開とリテールパートナシップの展開
創業から約6年。現在はアメリカとカナダで60店舗を展開。今後は200店舗まで展開する計画です。また、Amazon、コストコ、ターゲットなど18のリテールパートナーと契約を結び顧客との接点を拡大。オンラインプレゼンスの向上にも取り組みながら、オンラインとオフラインを融合させたビジネスモデルに進化させています。

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⑥ ユニークなお昼寝体験サービス
店舗によっては、ウエブ予約制のお昼寝スポットを併設。キャスパーのマットレスや寝具で45分間、お昼寝や瞑想ができるというサービスです。受付でおしゃれなパジャマや洗顔料を受け取り、更衣室で着替えて指定された個室へ。終わった後はコーヒーやミネラルウォーター、軽いスナックも楽しめます。価格は25ドル。お試し体験を通してユーザーエクスペリエンスを高めることにも積極的に取り組んでいます。

⑦ 「キャスパー・ラボ」では、最新テクノロジーで新製品を開発
サンフランシスコには、キャスパーが製品をテストするために作った「キャスパー・ラボ」を設置。眠りに関する様々な研究が行われています。直近では、良質な睡眠をコンセプトにしたスマートライト「Glow」を開発。アプリで設定したスケジュールに従って暗くなったり明るくなったりするだけのシンプルなライトは、キャスパーが目指す多感覚的な睡眠体験を提供する始まりの商品と位置付けています。今後は、テクノロジーを生かして「心地よい音楽が流れる柔らかいスピーカー」や「温められる重みのある枕」「心安らぐ複数の種類の香りを放つアロマディフューザー」「足を温めるフードパッド」など、これまでの眠りを変えるイノベーティブな商品を生み出していく計画です。

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⑧ キャスパーは「眠りを売る」ライフスタイルカンパニーへ
キャスパーの上場資料では自社を「スリープ・カンパニー(睡眠の会社)」と位置付けています。最近ではYouTubeやSpotify、Instagramで「Casper Sleep Channel」という睡眠に関するコンテンツもスタート。眠りを誘う製品でユーザーの寝室を埋め尽くすライフスタイル企業として、新たな成長が見込まれています。

以上、アメリカのD2Cブランドの草分けといえる「キャスパー」のマーケティング戦略について、さまざまな観点から見てきました。特筆すべきは、「ユーザー視点」つまり「顧客ファースト」の思想が根幹にあるということです。アマゾンの成長の根幹にも「顧客ファースト」の血が脈々と流れています。ユーザー視点に基づいた商品やサービスの開発こそが、これまで以上に豊かで楽しいライフスタイルを創造します。

 

阪急うめだ本店の「バレンタインチョコレート博覧会2020」は、女性をワクワクドキドキさせる宝庫だ。

阪急うめだ本店(大阪市北区角田町)では、今年も1月22日から「バレンタインチョコレート博覧会2020」が開催されています。私も先日会場を訪れましたが、還暦を越えたおじさんも心もワクワクドキドキ。女性のこころを動かす秘訣をたくさん学んできました。

■ワクワクドキドキポイント①圧倒されるスケール観
今年は「もっと広がるチョコレートの楽しみ方」をテーマに、約300ブランド、約3000種類のバレンタイン向け商品を、同店9階全フロア(約1000坪)と地下1・2階の食品売り場で展開しています。

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昨年は過去最高額となる約24億円を売り上げたそうですが、今年の売上目標はさらに1億円多い25億円。9階フロア全てがバレンタイン売場になっており、会場からは、阪急うめだ店の熱い想いや情熱がひしひしと伝わってきました。

■ワクワクドキドキポイント②選ぶ楽しみ、探す楽しみ、迷う楽しみ。
9階会場は、独創的な6人の日本人ショコラティエをクローズアップした「ジャパンクリエーションチョコ」、カカオ豆やその生産国に焦点を当てたチョコを集めた「カカオワールド」、チョコの断面図を紹介し、多様なフィリングのボンボンショコラを楽しむ「ボンボンショコラを解き明かす ワールドチョコレートライブラリー」、ハーブや花などの植物由来のフレーバーを使ったチョコや花の形のチョコを集めた「ハーブ&フラワー ボタニカルチョコ」など8つのコーナーを展開しています。どのコーナーも個性豊かなバラエティに富んだ商品がずらりと並び、カワイイパッケージを見ているだけでも時間が経つのを忘れてしまします。

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■ワクワクドキドキポイント③初出店や限定商品など話題性がいっぱい。
また、米サンフランシスコ発のカカオ豆からチョコレートを作る「ビーン トゥ バー」のチョコレート店「ダンデライオン・チョコレート」は、同店限定で発売する初の「生チョコレート」(9個入り、1,728円)、兵庫県養父市で自家農園の蜂蜜を使い、「ショコラティエだけじゃなく、農家的な目線」でチョコレートを作る「ル・フルーヴ」の「ガナッシュ・パリ」(6個入り、2,529円)など、初登場店も多く出店。これまで出会ったことのない商品に出会えることでワクワクドキドキ度はさらに高まります。

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■ワクワクドキドキポイント④イートインコーナーで美味しいを気軽に体験。
9階にある4店のカフェでは、ショコラティエやパティシエが監修した限定メニューを提供する「カフェコラボレーション」やソフトクリームやクレープなどのチョコレートスイーツを会場で楽しむ「チョコフードホール」など、イートインメニューも豊富にそろっています。カフェ店「ア・ル・ロイック」では、コロンビアでチョコレート選別から製造を行う「カカオハンターズ」の小方真弓さんと開発した「恋する乙女のストロベリーローズ」(1,080円)が楽しめます。阪急うめだ店のイベントでは、このところイートインコーナーを充実させていますが、気軽に美味しいを体験できることで、女性のワクワクドキドキ度は最高潮に達します。

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■ワクワクドキドキポイント⑤色々な味を楽しめる試食サービス
また、地下1・2階会場「チョコスイーツパーク」では、昨年初登場し人気を集めた「TOKYOチューリップローズ」がバレンタイン限定商品「ボンボンショコラ」(6個入り、2,376円)などを用意。男性へのプレゼント用として購入される、日本酒や焼酎などの酒や日本茶を使ったチョコレートは、9階会場まで上がらず手軽に買えるように地下2階へ移動しました。
お店によっては、試食サービスを行っているところも多くあり、色々な味を食べ比べることができる点も女性のこころを動かすおもてなしになっています。

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■ワクワクドキドキポイント⑥255ページにも及ぶガイドブック
配布はすべて完了したようですが、今年も超豪華な「バレンタイン博覧会2020」の公式ガイドブックが作成されています。2年前の私のブログでも紹介しましたが、

 

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まさにチョコレートのバイブルといっても過言ではない素晴らしいガイドブックです。チョコレートというアイテムで、これだけの品揃えができるということを教えてくれるマーチャンダイジングの教則本といってもよいと思います。編集内容やビジュアル面も素晴らしく、書店で販売しても十分に売れる内容になっています。見ているだけで幸せになる一冊。こんな価値のあるものが無料で配布されているのですから、まさに阪急うめだ店のバレンタインに対する思いが伝わってきますね。

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女性のこころを動かすには「ワクワク・ドキドキ」してもらうことがポイントです。阪急うめだ店の「バレンタインチョコレート博覧会2020」を見て、ワクワクドキドキの素をたくさん吸収してください。特に男性マーケターの方必見ですよ。

営業時間は10時~20時(金曜・土曜・2月9日~13日は21時まで、最終日は19時まで)。2月14日まで。

 

こちらの記事もご覧ください。

 

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買った後の満足こそが大切。

調査会社のクロス・マーケティング(東京・新宿)の調査結果によると、ネット利用者の8割弱が口コミを見ていることがわかりました。情報源としては電子商取引(EC)サイトが55%と最多。、口コミを見る状況は「買ったことのない商品を購入する時」が69%と多く、「家電を買う時」(63%)や「外食する時」(49%)が続きます。

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口コミをネットで見る理由としては、「あとで後悔したくないのでいろいろな情報を見ておきたい」が55%を占めました。この結果からは、否定的なコメントや評価を売り手側が排除してしまうと、逆に消費者の判断材料を制限してしまう可能性があることがわかります。

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続いて、「買いたい/利用したいと思う口コミ」ついての調査を実施。最も多かった回答は「使用経験に基づいて書いている/使ってよかった」で、実際に商品やサービスを利用した後の口コミが購買意欲につながることがわかりました。

他には「良いところも悪いところも書いてある」「許容できる範囲のネガティブな内容の書き込みがある」といった意見も。メリットだけでなく、デメリットにも言及した口コミを重要視していることがわかります。

最後に、「オンラインで口コミを書き込む理由」について尋ねたところ、回答者の年代が上がるにつれ、「他者に自分の体験を伝えるため」の割合が増加。若年層においては、備忘録やコミュニケーションツールとしての利用が多く、年代によって利用状況が異なることがわかりました。

これらの結果からは、買い物で失敗したくないという消費者心理がよく分かります。つまり、買った時の満足以上に、その商品が届いて自分が使った時の満足がいかに大切かということです。決して、お客様をがっかりさせてはいけません。

今やお客様の口コミ効果は、テレビや雑誌広告以上にパワーを持っているといっても過言ではありません。

シズル感のある写真で女性のココロを惹きつけよう。

みなさんこんにちは。和田康彦です。

今日の新聞に、ご覧のような美味しそうなスイーツの写真が並んだチラシが折り込まれてきました。この10月にそごうから阪急に屋号が変わった神戸阪急のチラシです。

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実はこのチラシ、関西の女性向け地域情報誌SAVVYとタイアップしたもので、スイーツ好きな女性のココロを一瞬にして捉えてしまいそうな「シズル感」あふれるクオリティの高い写真で構成されています。

ところで、「シズル感」って、あまり聞きなれない言葉かもしれませんので、キャノンイメージゲートウェイのサイトの中にある写真用語集で調べてみました。

『シズル感とは、もともとは広告写真(とくに料理写真)の現場で使われたみずみずしさを表すことばです。たとえば、湿度の高い部屋で冷えたコップに飲料を注ぐと、たくさんの「水滴」がコップの表面に付着します。飲み物をおいしそうに見せ、シズル感を演出する際に欠かせないのがこの「水滴」。このような撮影の現場で「もっとシズル感を出して!」と言われれば、被写体の水滴を多くしたり、ライティングを変えたりしながら水滴をさらに強調します。ほかにも、たとえばお刺身料理の撮影では、お刺身が乾燥すると新鮮さが表現できないので、「シズル感を出して!」と言われれば、刷毛でオイルなどを塗って新鮮さを演出します。 本来の「シズル(sizzle)」の意味はステーキなどの肉がジュージューと焼けて肉汁がしたたり落ちている状態をいい、そこからシズル感というようになりました。』

簡単に言うと「喉から手が出そうなくらい美味しそうな写真」といったらよいかもしれませんね。

ところで、印刷物でもウエブでも、何かを伝えるための道具としては、文字(ことば)と画像(写真やイラスト)のふたつしかありません。例えばスイーツの美味しさを伝えようとした場合、文字(ことば)でいくら「美味しいよ、美味しいよ」と叫んだところで、その美味しさはなかなか伝わりませんよね。ところが、思わず食べてみたくなるような「シズル感」のある写真であれば、その美味しさを理屈抜きで伝えることができます。

このところユーザー数が増えているSNSといえば写真投稿サイト「インスタグラム」ですが、日本国内でのインスタグラムの利用状況を見てみると、男女別ユーザー構成は女性が57%、男性が43%(Instagram Day Tokyo 2018での発表による)となっています。そして最も多いといわれているユーザー層は20~30代の女性ユーザーです。

つまり、女性は男性に比べて文字より写真が大好き!何かを伝えようとする場合文字でダラダラ書くより、一枚の写真の方が断然伝わりやすいということが言えます。

「インスタバ映え」ということばもすっかり浸透してきましたが、インスタバ映えの条件はまさに「シズル感」のある写真です。プライベートでたくさんの「いいね」をもらうためにも、たくさんの女性のお客様にフォローしていただくためにも、女性のココロを一瞬にして捉える「シズル感」のある写真で伝えることが大切なポイントになります。

メンタルアカウンティング(心の会計)って何?

みなさんこんにちは。和田康彦です。

普段はスーパーで買物する際、1円でも安いものを選ぶ人でも、旅行に行くと、ちょっと気が大きくなって財布の紐が緩んでしまう。そんな経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

他にも、「宝くじの当せんで得た30万円は散財してもいい」「月給の30万円は大事に使う」と心の中で勝手にお金を仕分けし、消費行動を変える人も多いという調査結果もあるようです。

このように、心の中で勝手にお金を仕分けし、消費行動に違いが生まれることを、行動経済学では、「メンタルアカウンティング(心の会計)」と呼ぶ専門用語で説明しています。

さてみなさんは、政府が10月の消費税率引き上げに合わせて始めたキャッシュレス決済によるポイント還元制度を利用されていますか。

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米マサチューセッツ工科大学のプレレク教授らの分析によると、プロバスケットボールの試合のチケットをオークションで買う際、クレジットカード払いの人は現金払いの人の2倍の入札額を提示したそうです。

また加藤浩徳東大教授らは目的の駅まで複数の経路を選べる大都市で、鉄道料金の支払い方法の違いが支出額や所要時間にどう影響したかを研究したところ、「現金以外で支払う人は料金が多少高くても時間を優先する傾向がある」ことがわかったそうです。

これらの調査結果から、消費者はキャッシュレス決済の方が現金で支払うときよりも負担の実感が薄い傾向があることがわかります。いわゆるメンタルアカウンティングが働いているのですね。

現金への信頼度が高い日本ではキャッシュレスス決済の普及が遅れています。キャッシュレス推進協議会によると、2016年時点の日本の比率は19.9%。韓国(96.4%)や中国(65.8%)だけでなく、英米との差も大きいようです。

ただ、、JR東日本で交通系電子マネーのポイント会員の9月の入会数が8月の14倍となるなど、キャッシュレス決済の利用者も急増しています。

キャッシュレス決済がこのまま増えていくと前回増税後のような急激な節約意識の高まりは回避できるかもしれません。

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「フォーエバー21」を破綻に追い詰めた消費者や市場の変化とは。

みなさんこんにちは。和田康彦です。

2019年9月29日、米フォーエバー21(FOREVER21)の経営破綻が伝えられました。9月25日には、日本からの撤退も発表。10月末をもって国内14店舗とオンラインストアはすべて閉鎖される予定です。

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フォーエバー21は、韓国からアメリカに移住したドン・チャンとジン・チャン夫妻が1984年ロサンゼルスで創業。市場トレンドを取り入れたデザインをトップスで5~10ドルという破格の値段で販売したところ大ヒット。その後、ウイメンズアパレルからメンズ、キッズ、アクセサリーへと取扱アイテムを拡大し、最盛期には、57ヵ国815店舗まで成長し、ファストファッション市場を牽引する存在になりました。

日本には2009年、原宿に進出。私もオープン当初、若者でごった返す原宿店を訪れましたが、価格の安さと日本では見られないデザインの奇抜さに大変驚きました。そしてその原宿店も2017年には閉鎖。業績悪化の兆しはすでに数年前から表れていたといえます。

フォーエバー21破綻の要因は「消費者や市場の変化に対応できなかった」ことに尽きると思いますが、いまアメリカで起きている具体的な変化について詳しくみていきましょう。

●米国では大型SC(ショッピングセンター)が苦境に立たされている
米国では1980年代からSCの大量出店に伴い、衣料品や生活用品のチェーン店が増加。フォーエバー21もSCへの出店拡大で店舗網を拡大して成長してきました。店舗面積も平均3500㎡と巨大なスペースに大量の商品を陳列して売上を拡大してきたのです。しかしながら、米国の小売業はアマゾンドットコムなどの台頭で主戦場はリアル店舗からネットへとシフト。大型SCへの集客力は徐々に低下して、フォーエバー21の他、ギャップやH&Mなどの低価格衣料品チェーンの閉鎖が相次いでいます。ギャップは、今後2年間で全米230店を閉鎖することを発表。2017年に経営破綻した玩具大手の「トイザラス」もまだ記憶に新しいところです。また、SCの中核テナントだった大手百貨店も大量閉店に追い込まれています。2019年度にはメーシーズが9店舗、JCペニーは18のフルラインデパートメントと9つのホームファニチャーストアを合わせた27店舗、シアーズは70店舗、ノードストロームも3店舗閉鎖を計画しています。

この結果、米国の大型SCの総面積は2018年1~3月期をピークに減少。クレディスイスでは、今後全米SCの20~30%が閉鎖に追い込まれる可能性があると予測しています。また米コアサイトリサーチの調べでは、2018年の米国小売業の閉店数約5500店に対して、2019年1~9月はすでに8500店を超えており、同時期の閉店数8567店から開店数3486店を引いた純減数は5081店で、2年連続の純減に。2017年~2019年3年間で米国の小売店は約1万店も減少することが報告されています。

●猛威を振るう「アマゾンエフェクト」
1994年ジェフ・べゾスが創業したアマゾンのコンセプトは「地球上で最も豊富な品揃え」。取扱アイテムを書籍から家電、日用品、食品、ファッションへと拡大し今や数億種類以上の品揃えで他社を圧倒しています。「地球上で最もお客様を大切にする企業であること」を理念に、スピード重視の配送サービスやプライム会員といったこれまでになかった顧客体験を創造することで、2,018年度のシステム部門の売上を除いた全米売上は1413億ドル。、10年間で14倍の成長を果しています。増収額も加速しており、2016年度は160億ドル、17年度は263億ドル、18年度は352億ドルにのぼっています。この結果、アマゾンのアメリカでのネット通販シェアは4割超といわれており、アマゾンが他の小売業に及ぼす影響が年々拡大しています。2011年には書店大手の「ボーダズ」、2015年には家電販売の「ラジオシャック」、2017年には玩具大手の「トイザラス」そして先日はファストファッションの「フォーエバー21」がアマゾンエフェクトで経営破綻に追いこまれています。USB証券では、2018年~26年の間に約7万5千店が閉鎖し、そのうち衣料・アクセサリー店は約2万店と最大になると予測しています。アマゾンでは、プライム会員向け無料試着サービス「プライムワードローブ」をスタート(不要なものは返品OK 返品送料無料)。ファッション分野を強化に向けた取り組みが進んでいます。

●国内SCも淘汰の時代へ
総務省の経済センサスによると、2016年の日本の小売業は10年前に比べて約2割減少しており、国内でも今後小売業の淘汰が始まっていくことが予測されます。日本のEC化率は6.22%(2018年)と米国の10%超に比べるとまだ低いものの、今後は伸びていくことが予測されます。つまり、アマゾンエフェクトの波はすぐそこまで来ているといっても過言ではありません。そんな目でSCを歩いてみると、このところ空き店舗が目立ってきていることに気づきます。SC向けシステム会社のリゾームによると、1500㎡以上のSCに入居する総テナント数は2018年3月時点で13万8579店。この1年間で約9200店舗も減少しています。そのうち半数近くの4200店舗はファッション・雑貨系のテナントで、フォーエバー21の破綻は他人事でないことがわかります。

●生き残りをかけたSC間の競争がし烈に
日本ショッピングセンター協会によると、2018年末時点の総SC数は3220で統計でみると、増加傾向にあります。ただ既存店SCの売上高は前年比0.6%増でわずかに前年を上回っている状況といえます。一方で、国内2018年のEC市場規模は約18.0兆円で前年の16.5兆円から8.96%拡大。ECがリアル店舗に及ぼす影響は年々大きくなっていくことは間違いありません。このところ、地方百貨店のみならず、地方の駅前一等地にあるようなSCも閉鎖が相次いでいます。今後は、生き残りをかけた競争がさらにし烈になっていくことが予想されます。

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●素晴らしい「顧客体験」をどのように提供するか
ある調査によると、アパレル企業の場合、店舗だけで購入する顧客は70%、ECだけで購入する顧客は20%、店舗とEC両方で購入する顧客は10%という結果が出ています。ただ、店舗だけで購入した顧客の購入額を100とした場合、ECだけの顧客の購入額は67、店舗とEC両方で購入した顧客の購入額は220で、店舗とEC両方を利用する顧客の購入額が驚くほど高いことがわかります。つまり、店舗とEC両方を利用する顧客を増やしていくことが、売上を上げる重要なポイントといえるのです。ECで注文した商品を店舗で受け取ってもらう。ECで見た商品を店に取り寄せて試着してもらうといった「クッリク&コレクト」で店舗への集客力を増やし、オンラインとオフラインの相乗効果をあげていくことが小売業の生き残りの鍵といえます。

既存店を伸ばすには『店の鮮度』が重要だ。「スシロー」好調から学ぶ、お客様を惹きつけるヒント。

みなさんこんにちは。ライフスタイルマーケティングの和田康彦です。

回転ずしチェーン最大手「スシロー」を展開するスシローグローバルホールディングスの業績が好調です。2019年9月期第2四半期累計(2018年10月~2019年3月)の売上高に相当する売上収益は965億円(前年同期比14%増)、営業利益は77億円(同33%増)と、いずれも上半期としては過去最高を記録しました。

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業績を牽引したのは既存店の高い成長率です。スシローの上期の既存店売上高は前年同期比6.9%増を達成。とくにこの1年は、競合のくら寿司やかっぱ寿司が伸び悩む中、高い水準の伸び率を維持してきました。

既存店の伸びを支えたのが、積極的な販促キャンペーンです。この上期は、より上質なまぐろを取りそろえた「まぐろ祭」や、通常よりネタを大きくした「てんこ盛り祭」といった期間限定のキャンペーンを相次いで実施。3~4年前の販促キャンペーンは月1.5回程度でしたが、現在は2回に増やしました。さらに全国放送・地方放送を問わずメディア露出を拡大したことも追い風となり、上期の既存店客数は前年同期比4.5%増となりました。

好業績のもう1つの要因が2018年9月に実施した皿単価の変更。それまで180円だった商品を150円に値下げした一方で、期間限定として280円で提供していた皿は300円に引き上げました。その結果、少しお金を払ってでも、いいものを食べたいという需要を取り込めたようです。そのほか、今や回転ずしチェーンの定番となったサイドメニューもスイーツを中心に積極投入を続けたことが貢献し、客数と同様に客単価も前年同期比2.3%増となりました。

水留社長は「すしネタの鮮度は当然大事だが、既存店を伸ばすには『店の鮮度』が重要だ。来店する度に新しい体験、うれしくなるような体験を提供できるか。その繰り返ししか、既存店を伸ばす道はない」と強調。

時代がどのように変わっても、私たち生活者は変化のないお店や売り場には魅力は感じません。都市が楽しいのは、活気にあふれ絶えず変化していて新しい発見があるからです。スシローの販促キャンペーンや皿価格の変更、スィーツメニューの強化など、お客様をワクワクドキドキさせる取り組みこそ、お客様に愛される店づくりの基本です。