女性を笑顔にする、マーケティングのヒント。

今や消費の8割以上の決定権を握ると言われる「女性消費者」から選ばれ、愛され続けるためのマーケティングのヒントをお届けします。

北野エースが「カレーなる本棚」にかける思い。

 

みなさんこんにちは。ライフスタイルマーケティングの和田康彦です。

 

「モノ消費からコト消費へ。」という言葉は、このところ耳にタコができるくらいよく聞かれるようになりましたが、モノを陳列している店頭で、お客様が「ワクワクしながら商品を選ぶ。探す」という体験価値を提供していくことは簡単ではありません。ただ、ネットで目的買いをすることが当たり前のスタイルになった今だからこそ、店頭で選ぶ楽しさやモノに触れる喜びを提供していかないと、店舗はどんどん淘汰されていくことが予想されます。

 

ところでみなさんは「カレーなる本棚」という名前を聞いたことがあるでしょうか。実はコレ、食品専門スーパー「北野エース」が展開する、まるで本棚のようなカレー売り場の名称で、商標登録までしているというから驚きです。

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(写真は、株式会社エースホームページより)

 

◆「カレーなる本棚」が誕生した背景

「北野エース」では十数年前に東京に進出した頃、食事に利便性が求められるようになり店舗では多くのレトルトカレーを取り扱うようになりました。2009年東武百貨店に「北野エース」が出店した際、大量のレトルトカレーをいかに少ないスペースで陳列、お客様に見やすく手に取っていただけるかを考えていた時に、担当者がふっとひらめいたのがレトルトカレーの箱を本棚に本が並んでいるように背表紙を見せるように並べる方法でした。

 

翌年、2010年4月に調布パルコ店に出店する際に木什器を導入し「カレーなる本棚®」と名付けました。「カレーなる本棚®」の北野エースと知名度もあがり、2012年暮れには「カレーなる本棚®」を商標登録、翌2013年には(食品における)「ブック陳列」の商標登録をするという熱の入れようです。

 

「カレーなる本棚®」に陳列されているカレーの種類は各店舗により異なりますが、店舗ごとの顧客のニーズやリクエストに応じて、日々店舗で入れ替えを行っているようです。果物を使ったカレーや北海道から沖縄までのご当地カレーなど約200~300種類を取りそろえており、レトルトカレーだけの売り上げでみると、毎年ずっと伸び続けており、まさに北野エースの目玉商品として集客にも寄与していることが推測されます。

 

◆ニッチ戦略で独自性を追求する「北野エース」

さて、北野エースを展開する株式会社エースの創業は1962年。初代社長北野治雄により食料品・雑貨・衣料品を主とした大型総合スーパー「エース」が始まりです。その後1985年に当時はまだ珍しいディスカウントストア「ブルドッグ」を、1994年にはエース新鮮館をオープン。以後、先進的な店舗戦略で圧倒的な集客力を持った店舗を次々と出していき、2002年には関東エリアへ進出し、次々と出店を続けています。

 

2017年12月期の売り上げは253億円。店舗数は全国に81店と規模は小粒ながら、独自のニッチ戦略で、北野エース好きなコアファンをきちんと掴んでいます。その背景には、北野秀雄社長の経営理念や、店づくり、品ぞろえ、サービスに対する確固たる考え方があるのです。

 

北野エースが最も重視していることが、「他社ではまねできない新しい価値の創造」です。北野社長の言葉からも「生活者の二極化と多様化が進む今の時代に生き残ることを考えると、標準化や総合化ではなくニッチを追求しないといけません。いかにして他社ではマネのできない付加価値を生み出せるか。それは脱スーパーと専門事業化による新しい価値の創造だと考えております。加工食品や専門分野に特化することで的を絞り、そこに付加価値を作る。店舗でいうと「北野エース」、商品では「キタノセレクション」がそれに当てはまります。エースにしかない商品、エースでしか作れない商品を増やすことが個性となり、それが地域密着に欠かせないものとなります。商品戦略も業態も出店計画も、周りと足並みを揃えるだけでは価格競争の域から抜け出すことはできません。日本のエースになろう、ニッチからメジャーになろう、そして流通革命を起こそう。20年以上前から構想していたことが、ここに来て現実味を帯びてきました。」と、「独自性の創造こそが北野エースの存在価値」という確固たる信念が読み取れます。

 

◆北野エースの圧倒的な3つの強み

最後に北野エースの具体的な強みを見ていきましょう。

☛小売りではなく「個売り」業 

「北野エース」「北野エースフーズブティック」「KITANOACEONE」など、首都圏・関西圏を中心に81店舗(2017年11月1日時点)を展開するエースには、一つとして同じ店はありません。立地や環境に合ったレイアウトに知恵を絞り、地域に暮らす人々の文化や生活スタイルに合った商品を豊富にそろえます。これまでの「小売」から、お客様個々の“ほしい気持ち”を満たす「個売」へ・・・。多くの顧客に愛されるかけがえのない店づくりへのこだわりが一番目の強みです。

 

☛一人でも求める人がいれば、一個でも仕入れる主義 

価格競争の激しい現在、安さを売りにすることなく、多くの顧客から支持を得るために圧倒的な品ぞろえに注力。全国から500種類を集めたカレー売り場はその象徴。他にも、味噌90種類、醤油150種類、ドレッシング170種類など、種類の多さでエースを抜くのは至難の技。価格の安さではなく、品質と価値の高さで仕入れた商品が、「どうせ買うならいいモノを楽しく買いたい」というお客様のニーズにマッチ。たとえ一個でも「ほしい」というお客様の声に応える売り場づくりが二番目の強みです。

 

☛初めての美味しさに出会う感動を、進化した小売サービスの一つに。 

新しくて珍しい品々を豊富にそろえるエースでは、商品知識を備えたコンシェルジュを各店に配置。顧客の求めに応じて、商品特性や美味しさをていねいに説明。 たくさんの商品の中から、顧客ひとりの好みや価値観、生活スタイルに合った理想の商品選びをサポートしている。顧客がより美味しいモノ、よりいいモノと出会い、より豊か買い物の喜びや感動を提供していることが三番目の強みです。