女性を笑顔にする、マーケティングのヒント。

今や消費の8割以上の決定権を握ると言われる「女性消費者」から選ばれ、愛され続けるためのマーケティングのヒントをお届けします。

現代女性が求めている8つの基本ニーズ①出来るだけ、エコノミーに暮らしたい。

 

みなさんこんにちは。ライフスタイルマーケティングの和田康彦です。

前回のブログでは、現代女性が求めている8つの基本ニーズについてお話ししました。今回からは一つ一つのニーズを紐解き、現代の消費との関連性を見ていくことにしましょう。

 

◆バブル崩壊以降「エコノミー志向(節約志向)」が生活者の中に浸透

1991年のバブル崩壊以降、日本経済は低迷期に入り「失われた20年」とも言われています。このころから、生活者の節約意識は芽生え、今では若い人でも「コスパ」が消費のキーワードとなるなど、「無駄な出費はできるだけ省いて、納得のいく買い物をしたい」という志向は、当たり前の考え方になっています。

 

その後2008年のリーマンショック、2011年の東日本大震災を経験した生活者は、将来に対する不安感から、より一層節約して将来に備えよう、という意識が高まりました。

 

また、ここ最近、上場会社を中心に企業業績は好調でありながらも、働く人の給料はあまり増えていません。その一方で公共料金の値上げやスマートフォン等の通信費が家計に重くのしかかっている現状もあります。

 

そんな背景から、「できるだけエコノミーに暮らしたい」という欲求は、現代女性が求めている8つの基本ニーズのベースになる重要なニーズです。今や、「コストパフォーマンス」が高く、リーズナブルな商品(お値打ち品)であることが売れるための基本条件といっても過言ではないでしょう。

 

◆エコノミー志向と新しい消費傾向

ここ数年の消費環境を見ても、生活者はエアコンや冷蔵庫、LEC電球などの「省エネやエコ家電」また燃費効率の良い「ハイブリッドカー」など、買う時のイニシャルコストよりも長い目で見たランニングコストを重視する傾向が強まっています。

 

また、国内外の人気ブランドが毎日お得な価格で買える「アウトレットモール」は今や、全国に37モール(日本ショッピングセンター協会調べ)展開。一日中レジャー 気分で楽しめる非日常性が、現在の「コト消費」志向にも合致して新しいショッピングスタイルを根付かせました。また、アメリカ生まれの大型会員制の倉庫店、「コストコホールセール」や「ドン・キホーテ」など、宝探し感覚で選ぶ楽しさと価格の安さを兼ね備えた専門店も景気低迷期にあっても人気を継続しています。

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◆EC急成長の背後には時間も家計も節約できる「エコノミー志向」が

ところで、買い物スタイルの変化で最も大きいのはネット通販の利用拡大です。経済産業省の電子商取引に関する市場調査結果によると、国内のB2C電子商取引の市場規模は、2010年の7兆7880億円から2016年には、15兆1000億円(前年比9.9%増)へと急拡大していることがわかります。全ての商取引金額(商取引市場規模)に対する、電子商取引市場規模の割合(EC化率)も10年の2.84%から5.43%へと拡大。物販分野における2016年度のスマートフォン経由のB2CECの市場規模は、5697億円増の2兆5559億円(前年比26.7%増)となり、物販B2CEC市場規模8兆43億円の31.9%を占めるようになっています。野村総合研究所では、B2CEC市場規模は2021年には25兆6000億円にまで成長すると予測。スマートフォンの普及に伴い、時間や場所を問わずにECを利用できるようになったことが市場の成長を後押ししています。

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EC拡大の背景には、スマートフォンの普及によって、いつでもどこでも買い物ができ、お店に行く時間やテマ、交通費が節約できること、店舗よりも価格が安く、無料や安い送料で届けてくれるアマゾンや楽天のようなECプラットフォーム事業者が存在感を高めてきたこと、店舗販売を生業としていたブランドや企業がこぞってECに進出してきたことなどがあげられます。お値打ち感のみならず、「タイムイズマネー」、つまり買い物する時間も節約できるエコノミーなショッピングスタイルが現在の生活者の節約ニーズを満たした結果といえるでしょう。

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◆エコノミー志向が後押しする「フリマアプリ」や「シェアリングサービス」の成長

そして、この流れは、メルカリに代表される「フリマアプリ」の大躍進やカーシェアに代表される「シェアリングサービス」の普及につながってきています。先ほどの経済産業省の電子商取引に関する市場調査結果によると、

2012年に誕生したフリマアプリの市場規模は2016年には3052億円へと急成長しており、今後も大きく伸びていく可能性を秘めています。最大手のメルカリの2016年6月期(15年7月~16年6月)の売上高は122億5600万円(前期比189%増)、営業利益は32億8600万円(前期は11億400万円の赤字)。売り上げが前年から大きく伸びた上、13年の設立から初めて黒字化を果たしており、月間の流通額は100億円以上と推定されています。

 

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またタイムズカープラスに代表されるカーシェア大手5社の2016年1~3月の集計によると、総車両台数は18,115台でうなぎ上りに増加。これによって売り上げ規模も2020年には2014年の倍の295億円に成長していくことが見込まれています。米国ではライドシェアの「uber」や民泊の「airbnb」が急躍進を見せており、この流れは今後日本でも現実味を帯びたものになっていくでしょう。

 

◆元気ファッションのキーワードは「スタイリッシュなお値打ち品」

ファッションに目を向けてみると、かつての大手アパレルブランドが総じて苦戦する中、スペイン発の「ZARA」やスウェーデン初の「H&M」、そして日本発「ユニクロ」に代表されるファストファッションが若者からシニア層まで幅広い客層に支持されています。いま、元気のあるファッション企業をひとことで表すと、「スタイリッシュなお値打ち品」を提供しているブランドということが言えます。単に安さだけでなく、おしゃれでセンスが良い「スタイリッシュ」というデザイン価値がなければ顧客から見向きもされない時代になってきています。

 

その他、「ダイソー」や「セリア」といった100円ショップもデザインに磨きをかけ、次々に新商品を開発することで毎年店舗を拡大。エコノミー志向の生活者のニーズをがっちり掴んで、売り上げも順調に成長を続けています。

 

サービスに目を向けると、移動はできるだけ安く済ませたいというエコノミーニーズを満たした、LCC(格安航空会社)もすっかり定着して生活者のひとつの選択肢になっています。

 

そして「できるだけエコノミーに暮らしたい」というニーズは、自ら生産者となる「手作り志向」の高まりにも拍車をかけています。minne(ミンネ)やCreema(クリーマ)に代表されるハンドメイドサイトはどこも大賑わい。詳しくは、現代女性が求めている8つの基本ニーズの7つ目「消費するだけでなく自ら何かを生み出したい。」の項で説明します。

 

このように、エコノミーに暮らしたいというニーズは、所有から使用へ、消費から生産へという生活者のライフスタイルを大きく変化させています。

 

将来に対する不安が高まる中、これからも生活者の「エコノミーに暮らしたい」というニーズはますます大きくなっていくことが予想されます。ただ、「エコノミー」であることは、ある意味当たり前であって、その上にどんな新しい付加価値をつけるのか、どんなニーズを満たしていけばよいのか。次回以降で引き続き述べていきたいと思います。